先日TKCの研修会で鈴木ひとみさんの講演を聴かせていただく機会がありました。
鈴木さんは著書「車椅子の花嫁」がドラマ化されていますのでご存知の方も多いかと思います。講演会のテーマは「生きる!!」でした。テーマ通り内容は凄まじいものでした。
銀行勤務中の82年にミスインターナショナル日本大会で準ミス日本代表に選出され1年間の任務を果たされたのち、ファッションモデルやテレビのアシスタントもされ、と充実した忙しい毎日を過ごされる中撮影帰りの車で事故に遭われ、車外に投げ出された身体は22歳のその日から車椅子の生活を強いられたそうです。
当時は天井を見るだけの生活。リハビリが開始されても、動かなくなった足のリハビリではなく、動く事が出来る身体を鍛えるためのリハビリだと知った時の失望感。握力は0(ゼロ)。食事する時はスプーンの柄の部分にタオルを巻いて太くしたら握れるという現実。
「運命を受け入れると言う事は、いまだに出来ていないと思う」と30年たった今でも思われるそうです。でも、様々な方の協力と何より事故当時婚約者だった今の旦那様から「5年、いや3年でもいいから頑張ってみよう。もしそれでも頑張れなければ、生きることに疲れたら、その時は一緒に死ねばいい」と言う手紙を貰って初めて生きると言う決意をされたそうです。
講演中は、事故当時の事やセクハラ・パラリンピック出場の事など、ご自身の経験を面白おかしく話をしてくださいましたが、中でも私が気になったのがこの「バリアフリー」と言う言葉でした。鈴木さんはおっしゃいました。バリアフリーって障害者・健常者・老人・子供全ての人の壁を開放する事だと。誰かの為では無くみんなの為の物である事だと。
最初は何をおっしゃっておられるのかが分かりませんでしたが、たとえばの話をしてくださいました。「自動販売機でコインを入れるところに受け口のあるものがありますよね。あれがあると小銭を入れ易いし、そう言う販売機は受取口が下では無く中ほどにあるので屈まなくてもいい。(車椅子利用者用に開発)沢山のエレベーターが並んでいる所では、到着すると到着合図音が鳴りランプが上か下に点灯する。到着した事と上行きか下行きかがすぐにわかります。(聴覚・視覚障害者用に開発)」まさしく、健常者である私達も快適に利用しています。そう言う事がバリアフリーだと言う事なんですよね。
皆さんも少なからず経験されていると思います。大きなキャリーバッグを持って旅行に出掛けた時、乳母車を押して買い物に出掛けた時、手や足を怪我した時。今の私達にとっては一時の不自由かも知れませんが、高齢化の今の時代です。歳を取って歩くのも精一杯になるかも知れません。両親を車椅子で介護することになるかもしれません。車椅子に限りません。目も見難くなって行きます。耳も遠くなって行きます。重い荷物を持てなくなります。障害者専用とか、優先座席とかという問題では無く社会全体がバリアフリー化していればみんなが自由に生活して生きて行けるのではないでしょうか。
鈴木さんは笑いながらおっしゃいました。「バリアフリーにするにはお金が掛かるんです。だからバリアフリー化していない自動販売機でジュースは購入しないでください。そうすれば業者も考えてくれると思います。」
本当に小さな一歩です。でも、その小さな一歩に協力していきたいと思いました。
毎月、職員達が交代でつれづれなるままに綴っております。