税理士 花谷隆之
明けましておめでとうございます。昨年も皆様には多くのご指導ご鞭撻を賜りまして誠にありがとうございました。年末年始は皆様どのようにお過ごしになられたでしょうか?私は年末からインフルエンザにかかり、年末年始は本当の意味で寝正月を過ごしました。ここ10年以上年末は私が自称(笑)会長を務めているサーフィンサークルのメンバーと冬の海にサーフィンに出かけておりましたので、家でゆっくり過ごす年末年始は新鮮で良かったです。
この2015年1月から相続税増税(基礎控除の4割削減や税率の改定等)が行われました。このような個人にとって負担増になる改定がある一方で、贈与税に関しては新たに「結婚・出産・育児」資金の贈与について1,000万円までを非課税とする制度が創設されます。(2015年4月施行)
この制度は20歳から49歳までの子・孫への贈与が対象になり、贈与は金融機関の専用口座に入金する形で行われます。(仮に贈与された子・孫が50歳になった時点で贈与を受けた専用口座の資金を使い切れなかった場合は贈与税がかかる場合がありますので注意が必要です。)
非課税の対象となる贈与資金は、「@結婚式・披露宴の費用、A新居の住居費や引越し代、B不妊治療費、C出産費用、D産後ケア費用、E子供の医療費、F保育料」等です。一方で、「@結婚相談所に払う費用、A新居の家具や電気製品、Bベビーベッドの購入費」等は非課税の対象になりません。
この制度は2013年4月1日より施行された「教育資金贈与の非課税措置」によく似ていますが留意すべき点があります。それは「結婚・出産・育児資金贈与の非課税措置(以下、「結婚資金等贈与の非課税措置」という。)」が相続税対策に活用しにくい点です。具体的には「教育資金贈与の非課税措置」は仮に贈与者が亡くなった時点で専用口座に贈与資金が残っていた場合でもその贈与資金は相続財産にカウントされなかったのに対し、「結婚資金等贈与の非課税措置」は贈与者が亡くなった時点で口座に贈与資金が残っているとその贈与資金は相続財産にカウントされ相続税の対象となってしまいます。
日本では個人金融資産は1,600兆円で、その6割強は60歳以上の高齢者が保有していると言われております。国は贈与による若年層への資金移動をきっかけとし、消費を刺激し景気対策につなげたいとの思惑があるのでしょう。贈与税に関しては今回ご紹介しました「結婚資金等贈与の非課税措置」の創設の他、「教育資金贈与の非課税措置」の対象の拡充(これまで対象とされていた贈与に通学定期代や留学のための渡航費の贈与が加えられた)、さらには住宅取得等資金贈与の非課税制度の延長及び拡充等のように、制度が納税者有利に動くことが多々あります。
今後、これらの制度等を活用しながら相続税対策を行うことが必要な場合もあると思います。その際は制度のメリットだけではなく、デメリット等の留意すべき点もしっかり押さえておくことが重要となります。また、税金面だけではなく子供・孫からの「期待」が強まるがゆえ、それに応えるべく多額の資金を贈与しすぎて生活資金が過度に少なくなることも今後リスクとしてあり得ます。
相続・贈与については税金や生活設計等を踏まえ総合的に判断していく必要があります。悩まれた際はお気軽にご相談下さい。我々は常に皆様の身近な相談相手となるべく今年も日々精進して参ります。今年も皆様にとって実りの多い一年間であることを念じております。今年もどうぞよろしくお願い致します。