西野 信宏
「経営理念」を考えた事はありますでしょうか?「当然、掲げているよ」という方もおられると思いますし、「特に必要だと思わないから、考えたことないよ」という方もおられると思います。先日、受講した事業承継の研修で、「経営理念」についての話がありましたので、少し紹介したいと思います。
その研修で紹介されていた会社は、金型や各種プレス機などの生産設備の製作を行っている会社で、特殊な技術を持っており、その技術をいかした製品は、他の会社の製品に比べて耐久性などが大幅に向上することから、他社製品との差別化を可能としていました。そして、年配のベテラン職人から、若手従業員への技術承継が成功している例として紹介されていました。従業員の平均年齢は30代と若いのですが、会社全体で技能承継を推進しており、その承継をした側にも、受けた側にも、その労に報いるために、様々な社内制度を整備しているという事でした。この技能承継が成功している秘訣の原点とされていたのが、その会社の経営理念で、いくつかある経営理念の中に、「人が育つ環境を作り、従業員の生活を充実させる」という事を掲げており、その経営理念に基づいて、社内での教育制度を充実させた結果として、現在の会社の成功へとつながっているという事でした。つまり、「人を育てる」という経営理念が、社内制度を充実させ、会社の特色となり、結果的に利益に結びついているという事でした。
「経営理念」という言葉を辞書で調べてみると、「企業の個々の活動方針のもととなる基本的な考え方」とされており、今では、企業理念・社是・クレド・スローガンなど色々な言い方があります。会社の倫理観や、事業を行っていく際の様々な判断基準となるものとされています。
他の有名企業の経営理念をいくつか紹介したいと思います。『ZOZOTOWN』を運営する潟Xタートトゥディの企業理念は「世界中をカッコよく、世界中を笑顔に」です。スタートトゥディの社員の行動もすべて「カッコいいかどうか」が判断基準になっているそうです。例えば、従業員が遅刻したとき、一般的な会社であれば、遅刻した事に対して怒られますが、スタートトゥディでは「遅刻はあなたにとってカッコいいことですか?」と聞かれるそうです。遅刻を怒られるよりも、反省してしまいそうです。
『Google』では、創業初期には「邪悪になるな」というスローガンがあったそうです。広告システムに、ある修正を加える事で、収益にかなり貢献する可能性があったときに、この修正を行うかどうかの会議中、従業員から「こんなことはやるべきじゃない。邪悪になるぞ」という発言があがり、その修正は見送られたそうです。これは、「邪悪になるな」というスローガンが、会社の価値観に沿うものか判断するための判断基準として機能していたということです。
業績に直結するわけではないかもしれませんし、経営理念は必要ないという考え方もあるかと思います。しかし、長い目でみると、経営理念は、事業を行っていく上での、倫理観・判断基準として、大切なものであると思います。今まで考えた事がないという方は、一度考えてみてはいかかでしょうか?