西野 信宏
令和3年4月1日から消費税の総額表示の完全義務化がはじまりました。値札や飲食店のメニューなど直接消費者に表示するものについては、消費税を含めた総額で表示しなければいけないというものです。対応に追われた事業者様も多かったと思います。
消費税は近年さまざまな改正が行われていますが、令和1年10月1日からの標準税率10%への変更と、食料品などへの軽減税率導入は皆さまの記憶にも新しいのではないでしょうか?
この税率変更に伴い今後も大きな変更が予定されています。それが「適格請求書(インボイス)等保存方式」の導入です。これは適用税率や登録番号が記載された「適格請求書」を保存しなければならないという制度になります。取引のなかの適用税率や消費税額を明らかにし、事業者が正確な計算を行うことを目的としています。
この制度の注意点は、「適格請求書発行事業者」として国税庁へ登録した事業者しか「適格請求書」を発行できない点です。そして、この国税庁への登録は消費税の課税事業者しか行えません。つまり免税事業者として消費税を納税していない事業者は適格請求書を発行できないことになります。
(⇒消費税は、消費者が負担する税金です。消費者は物やサービスを購入するときに、いったん消費税を事業者に預けます。この預かった消費税を国に納付する義務がある事業者を「課税事業者」、納付する義務がない事業者を「免税事業者」といい、2年前の売上高を基準にして判定されます。免税事業者であっても申請することで課税事業者になることが可能です。)
事業者が納める消費税は、売上などの収入に課せられた消費税額から仕入などの経費に課せられた消費税額を控除した後の金額が納税額となります。この控除することを「仕入税額控除」といいます。
今後はこの適格請求書の保存がないと仕入額控除ができなくなります。つまり、仕入税額控除を行うためには、前述の登録を行っている事業者から仕入れを行う必要があることになります。
課税事業者からすると、免税事業者へ支払った消費税については仕入税額控除を受けることができなくなり、その分納税額が大きくなってしまいます。この結果、免税事業者は取引先から課税事業者になって適格請求書を発行することを求められたり、取引自体を敬遠されてしまう恐れがあります。
この適格請求書制度は令和5年10月1日から始まります。制度開始から登録事業者になるためには令和5年3月31日までに申請書を提出する必要があります。(登録自体は令和3年10月1日から申請可能です。)
現在、免税事業者である事業者様にとっては、課税事業者になるかどうかの検討が必要になります。課税事業者になった場合には、消費税の納税が発生することに加えて、請求書作成に伴う事務作業の増加や、システムの見直しといった点も考慮する必要があります。
制度開始まではまだ時間はありますが、早めの準備が必要になります。課税事業者への変更を検討される方はご注意ください。