長谷川 晋也

 自民党の総裁選も終わり、第4次安部改造内閣が発足しました。このまま2019年8月までいけば、安倍首相の在職日数は歴代1位の桂太郎元首相を抜く事となり、歴史を塗り替える長期政権の実現が現実味を帯びてきました。
 さて、そんな安倍政権の目玉政策の一つである「一億総活躍社会」に伴う「働き方改革」という言葉を最近よく耳にすると感じている方が多いのではないでしょうか。この「働き方改革」により、2019年4月から施行される事項のうち、クライアントの皆様に影響を及ぼす可能性がある部分を中心に少しご紹介させて頂こうと思います。

 そもそも働き方改革とは、政府が経済振興の大方針として打ち出している取り組みです。
日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「労働ニーズの多様化」により、従来の経済政策の延長では、もはや安定的な経済成長が見込めないことが提唱の背景にあるようです。そのため、場当たり的な対応ではなく、問題の根幹に手を打ち、人々の働き方ひいては社会のあり方自体を見直すことが必要とされています。社会構造が大きく変わる中で、社会のシステム自体のあり方を再構築し根本の問題解決をはかる大きな改革です。

【労働時間法制の見直し事項】
@残業時間の上限規制
(猶予・除外事業・業務あり)(中小企業は2020年4月より)
・原則、月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がない限りこれを超えることができない。
・臨時的な特別の事情があり労使の合意があった場合でも、年720時間以内・複数月平均80時間以内・月100時間未満を超えることができない。
また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6ヶ月まで。

A「勤務間インターバル」制度の導入促進
・1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間の確保をする。

B1人1年あたり5日以上の年次有給休暇の取得の義務化
・10日以上の年次有給休暇が付与されている従業員に対し、毎年5日、時季を指定し有給休暇を与える必要が生じる。

C月60時間以上を超える残業の割増賃金率の引上げ(中小企業は2023年4月より)
・1ヶ月の時間外労働が60時間を超える部分について25%から50%に引上げられる。

D労働時間状況の客観的な把握の義務化
・健康管理の観点から、裁量労働制が適用される人や管理監督者を含め、全ての人の労働時間の状況が客観的な方法・その他適切な方法で把握されるよう義務付ける。

上記の他にも、「フレックスタイム制」の拡充、「高度プロフェッショナル制度」の創設、産業医・産業保健機能の強化などがあります。

これらの変更事項だけ見ると、「働き方改革」は、単なる長時間労働の是正等、労働条件の改善のためだけの取り組みのようにどうしても感じてしまいます。
しかし、少子高齢化時代の日本経済を生き抜いていくためには、良き人材の確保が企業存続にとって最大の武器になることは間違いないと思います。これを機会に、少し自社の労務体系について見直してみてはいかがでしょうか?