長谷川 晋也

 今年も改正税制が施行される時期がやってまいりました。平成27年4月1日から施行されるものとしては、法人税率の引下げ(25.5%⇒23.9%)・結婚子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の設置等があげられます。これらの注目すべき論点は、様々なメディアで取り上げられており、皆さまもすでにご承知の事でしょう。そこで今回は少しマイナーな改正論点にお付き合い頂こうと思います。

 平成28年1月1日から施行される改正論点の中に、法人が平成28年1月1日以後に受ける利子等に係る税金、通称「利子割」の課税が廃止(正確には、平成28年1月1日以後に支払いを受けるべき利子等に係る利子割の納税義務者から法人を除外し個人に限定すること。また、法人の法人税割額から利子割額を控除する制度およびこの制度による控除不足額を当該法人に係る均等割額等への充当または還付する制度の廃止。)されることになりました。

 余りなじみのないこの利子割とはどのような税金かと申し上げますと、銀行等から利子等(公社債、預貯金の利子、懸賞金等のほかに抵当証券、金投資口座、一時払養老保険等の金融類似商品の収益等)の支払いを受ける際に課される地方税です。「そんなんまで税金が課されているの」、と思われた方もいらっしゃるかとは思いますが、利子等の入金の際には地方税5%(別に所得税等が15.315%)が徴収され各都道府県等に銀行等を通じて納付されております。

 ただでさえ今は利率が低く、もらえる利息も少ないのだからこの利子割の制度が廃止されようが何も影響しないのではと思われるかもしれません。しかし、この法人に対する利子割廃止の改正には、事務負担の軽減(税金の無駄遣いの解消)という最大の理由があります。

 少し複雑な話となるのですが、法人に対して課せられる利子割は、利子等の支払いの際に徴収される利子割と、利子等が法人の課税所得に含まれ課税される法人税割との二重課税の問題が発生することになります。この二重課税を排除するため、現行制度では、法人は所在都道府県ごとの利子割額を計算して申告し、黒字法人の場合は法人住民税から利子割額を控除して納税、赤字法人の場合は還付を受けることになります。

 つまり、利子割は各都道府県別にて徴収されるものの、還付・充当などの精算業務は各自治体が法人の本店所在地の自治体に集計精算しなければならず、多大な事務負担を要しており、また数円程度の税金を還付するために数百円の振込手数料を税収から拠出されているという現状がありました。

 今回の改正は、公金の削減が行われた珍しい事案と個人的には思っております。税収減・赤字財政のこの時代、まだまだ多くの無駄を排除することが必要であると思います。行政はこの改正を機にこのような無駄な行政費用の削減を早急に取り組んで欲しいものです。
 なお、法人に係る利子割が廃止されても、法人の受け取る利子等は、その法人の所得として法人税割が課税されるため、法人の税負担は変わらない事にはご留意ください。