今回のテーマは相続についてです。数字のデータをメインにして説明をいたします。


@ 相続放棄の件数 

平成20年 156,312人

平成16年  141,477人 

平成15年  140,236人

平成10年   83,316人

平成5年   58,490人

昭和60年  46,227人

昭和50年   48,981人

昭和40年  110,242人

昭和30年  142,289人

昭和24年  148,192人


 昭和22年5月2日の相続までは旧民法の家督相続が行われていました。よって長男以外の方が相続を放棄していました。また地方にかんしては古い慣習から昭和40年までは相続の放棄が10万人以上ありました。平成5年から放棄の件数が年々増えているのは、財産よりも負債が多いからだと考えられます。


事例(他の税理士から聞いた話です)

ご主人が亡くなりました。負債が多かったため、妻と子供は相続を放棄しました。その相続発生時には両親がともに亡くなっていました。この場合の相続人はご主人の兄弟が相続人となります。このとき亡くなった日から3ヶ月が経っていました。そのときに消費者金融から相続人である兄弟に借入金を支払えと言ってきました。この場合は、弁護士に相談して和解してもらうしかないとのこと。兄弟といってもなかなかお互いの資産状況というのは分からないため事前に連絡することも大切ではないでしょうか。


A 相続税のかかる割合は死者数の約5% 

平成16年度の死者数      1,028,602人 

平成16年度の出生数      1,110,835人  増加 82,233人


平成17年度の死者数      1,083,796人

平成17年度の出生数      1,062,530人  減少 21,266人

(厚生労働省 人口動態統計より)


平成17年度に死者数と出生数が逆転しました。よって日本の人口は徐々に減っていきます。

平成16年度の事例でみると死者数約103万人

相続税の申告をした被相続人の数 約4万3千人

相続税がかかる割合 4.2%  (国税庁の資料より)


B 調査があれば約9割は追徴税額あり 

平成16年7月から平成17年6月における相続税の調査件数は 13,760件のうち申告漏れ件数11,895件(約86%)


相続における対策は、事前に準備することが大切です。相続が起こってからでは遅すぎます。家族構成や持っている財産、債務によって問題点が違ってきます。事前に会計事務所に相談することをお勧めします。



相続設計における重要な3要素

@ 財産の移転対策   

誰が、どの財産を、どれだけ

遺言書の有効性も分かりますが、生前、配偶者や子供達を全員集めて、自分の考えとともに財産の分け方について面と向かって話すほうが大切かと思います。そのためには自分自身がどんな財産を持っているのかを知る必要があります。


A 評価引き下げ対策 

所有不動産に賃貸物件を建築する

「更地に借金をして賃貸物件を建てると相続税の評価額が下がる」という人がいます。これは二つの部分に分けて考える必要があります。賃貸物件建築は財産評価が下がります。しかし借入をしても評価額は下がりません。また、賃貸経営をすることは不動産オーナーになるわけですから、経営者として儲かるように考えて投資をおこないましょう。


簡単な例ですが

2億円の現金があり、1億円の物件を現金払いで建てた場合の財産・債務

現金 1億円  建物 1億円 (財産評価額:6000万円)

2億円の現金があり、1億円の物件を借入金で建てた場合の財産・債務

現金 2億円  建物 1億円 (財産評価額:6000万円)  借入金 1億円


正味財産はどちらも変わりません。評価が下がるのはあくまでも賃貸物件や貸家建付地の評価額です。借入金により、現金が増えてそれを投資したという形になります。


他にも受取生命保険金の非課税枠利用 (法定相続人1人につき500万円)

小規模宅地等の評価減、自社株の評価下げ、年金権利の評価(税制改正あり)、養子縁組、生前贈与


B 納税財源対策 

現金納付、延納、物納、生命保険による納税資金準備

物納に関しては、現金納付や延納が困難な場合に限ります。物納に関しては平成18年度に税制改正が行われて物納をしようと思う場合は事前に準備しておかなければなりません。

改正前:物納申請書と金銭納付が困難とする理由書の2枚だけ申告期限までに提出

改正後:物納申請書と金銭納付が困難とする理由書、登記事項証明書、測量図、境界確認書等を申告期限までに提出


生命保険金の請求にも時効があります。

商法の規定では2年 保険会社の普通保険約款では3年となっています。これも事前にどんな保険に加入しているのかを確認しておくべきでしょう。


この3つのバランスが大切です。

財産評価を下げることばかりに目を向けないで、将来生じるメリットやリスクを考えて相続対策はおこなわなければなりません

以上

CFP 望月貴之