花谷 隆之

 令和4年6月7日に岸田文雄首相が掲げていた「新しい資本主義の実行計画と経済財政運営の方針(骨太の方針)」が閣議決定されました。
 日本人の預貯金に偏る個人金融資産を投資に振り向け、経済の活性化を目指す「資産所得倍増プラン」について、岸田首相は「複数年度にわたる具体的なプランを本年中に策定し実行する」と明言しました。
 その「資産所得倍増プラン」の目玉政策の一つにiDeCo(個人型確定拠出年金)NISA(少額投資非課税制度)の改正案があります。
 この様な背景から今後iDeCoとNISAの注目度が高まると考えられますので、これらの制度(現行制度)のおさらいをしてみたいと思います。

iDeCoとは自ら運用対象を選択し掛金を積立てる公的年金に上乗せされる私的年金制度です。積立て運用した掛金は原則60歳から75歳までの間に受け取ることが出来、受け取る際は所得税の軽減効果を受けやすい。掛け金は毎月5,000円から積立てることが出来、比較的始めやすいです。(毎月の掛金上限枠は職種によって異なる)

・メリット
@途中で投資累計について投資対象の変更を行うことが出来る。(スイッチング)
A支払った年間掛金額をその年の所得から差し引くことができるため、その分の所得税と住民税が軽減される。
B受取り時の税制優遇がある。一括で受け取る場合は「退職所得控除」を、分割で受け取る場合は「公的年金等控除」を差 
 し引くことが出来るため、所得税の軽減効果を受けやすい。(一括受取と分割受取りを併用することも可能。)

・デメリット
@元本割れのリスクがある。元本と利息が約束された定期預金を選べる運用もあるが、それ以上の運用益を期待すると投資 
 信託がメインとなるため、運用成果次第では資産が減少する可能性がある。
A口座管理手数料等がかかる。
B60歳まで引き出すことが出来ない

NISAとは非課税投資枠を使った投資によって得られた利益や配当金が非課税となる少額投資非課税制度です。一般NISAは年間拠出額の上限が120万円、非課税期間は5年、最大で600万円まで投資出来ます。つみたてNISAは年間拠出額の上限が40万円、非課税期間が20年、最大で800万円まで投資出来ます。(ジュニアNISAは割愛)

・メリット
@上限拠出額範囲内の元本から発生した配当や譲渡益について税金がかからない。
A少額から積立投資が可能。(金融機関にもよりますが月々100円単位からOK)
B上限額内なら何度でも売買可能。
Cいつでも引き出し可能

・デメリット
@元本割れの可能性がある。
A各年間の投資ごとに別々の管理を行わなければならない。
B他のNISA制度との併用が出来ない。
C課税口座(一般口座・特定口座)との損益通算や損失の繰越控除が出来ない。

 昨今の急激に進む円安・物価上昇により、お金の価値が相対的に下がっていく傾向にあります。そのため、我々はこれまで以上に自身で将来の生活防衛について考えざるを得なくなってきており、リスク許容範囲内での資産運用もその生活防衛の有用な選択肢の一つになってきていると思います。
 今後、前述の「資産所得倍増プラン」によりiDeCo、NISAは現行制度よりも活用し易い制度に改正されると考えられます。これを機にこれらの制度を理解し、ご自身の状況に応じて活用をご検討されてはいかがでしょうか。