西野 信宏 

 新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

 昨年も様々な税制改正がありましたが、この2017年にも色々な税制改正が予定されています。話題となっている大きなものでは、女性活躍を促すための配偶者控除の見直し(配偶者の年収上限を103万円から150万円に引き上げ)や、ビールへの減税・発泡酒への増税などです。また、個人型DCの加入対象者が拡大される事なども決定しており、新聞などでも個人型DCという文字をよく見かけるようになりました。今回は、この個人型DCを紹介したいと思います。

個人型DCとは、個人型確定拠出年金の事です。この制度は、自分の将来の年金のために、毎月一定の掛金を出して積立を行うというものですが、この掛金の運用先の金融機関や金融商品を自分で選択するというのが大きな特徴です。そのため、自分が選択した運用結果によって将来受け取る年金額が変わるのに対して、掛け金(Contribution)は確定(Defined)している事からDCと呼びます。

昨年までは、原則として20歳以上の自営業者や学生、勤務先に企業年金のない会社員が加入可能でしたが、平成29年1月より専業主婦、公務員、企業年金のある会社員なども入れるようになり、現役世代のほぼすべてをカバーすると言われています。これにより市場拡大が見込まれ、各金融機関が新商品を投入しており今非常に注目されています。

この個人型DCに加入した場合の大きなメリットは以下の3つです。
@拠出時の税制優遇 … 掛け金全額が所得税や住民税の控除対象となります。仮に毎月1万円を拠出した場合、年間12万円の掛金分だけ所得が減る計算になり、所得税と住民税を合算した場合の最低税率15%で計算しても、1万8,000円の税金が軽減されます。

A運用時の税制優遇 … DC内で得た利益や運用益は非課税となります。現在、預貯金の利息や投資信託などから得られる利益には、所得税15%(復興特別所得税を含めると15.315%)と住民税5%の合計20%(同20.315%)の税金がかかりますが、DCの運用時に得られる利息や利益に対しては課税されません。例えば運用収益が100万円であった場合20.315%が課税されると79万6,850円になってしまいますが、DCの中であれば100万円のままで受取れる事になります。

B給付時の税制優遇 … 積立てた拠出金を、一時金としてまとめて受け取った場合には、退職所得とされ、積立てた期間を勤続年数として退職所得控除が適用されます。例えば積立期間が30年であった場合には1,500万円の退職所得控除が受けられるので、その金額の範囲内なら課税されない事になります。(年金として分割受取した場合にも一定の優遇措置があります。)
 
一方で、原則60歳までは引き出せない事や、運用のリスクを本人が負う事などのデメリットもあります。
このように個人型DCはメリット・デメリットがありますが、上記の@とBのメリットについては、中小企業経営者や個人事業主にはおなじみの「小規模企業共済」のメリットと同様です。そのため、今までは個人型DCを利用するより、先に小規模企業共済で年金を積み立てている方がほとんどだったと思います(掛金上限は、小規模企業共済については月額70,000円、個人型DCについては、会社員の場合は月額23,000円、自営業者は月額68,000円までとなっています)が、今後は、この個人型DCブームの影響により、小規模企業共済よりも魅力的な商品が各金融機関から登場するかもしれません。

これから新聞やニュースなどで取り上げられる事も多くなると思いますので、皆様も注目してみてはいかがでしょうか。