令和3年2月17日付けの日本経済新聞において、「企業が取引先への支払いに使う紙の約束手形について、経済産業省は2026年をめどに利用廃止を目指す方針だ。産業界に対応を要請する。全国銀行協会も連携して銀行振り込みや電子記録債権(電子手形)への移行を促す。約束手形は一般に現金化まで数カ月かかる。受注側の中小企業の資金繰りを圧迫しがちな古い商慣行の改善に向けて動き出す」という報道がありました。
早速、お客様から「今後手形はなくなる方向で考えていた方が良いのですかねぇ?」とのご質問があったこともあり、今回は手形(決済方法)の現状について少し触れてみようと思います。
現行、中小企業の決済方法としては、現金支払い・小切手の振出し・口座振込・約束手形の振出し・電子記録債権の発行があると思います。その中での手形決済割合は、業種・決済金額によっても異なるとは思いますが、全体の10%くらいの感覚です。
ちなみに、東京商工リサーチの発表によりますと、2020年の約束手形の交換高は134兆2,534億円(前年比27.0%減)で、ピークだった1990年(4,797兆2,906億円)のわずか3%(97.2%減)にまで減少しているとの事です。
このように手形が急速に減少したのは、ネットバンキングによる決済の増加や印紙税・保管コストの削減、また全国銀行協会(全銀協)が推進する電子記録債権へのシフトが背景にあるようです。(ただ、2013年2月にスタートした「でんさい」は、2020年の交換高が手形の約6分の1にとどまり普及は進んでいないとのことです。)
今後の動向としましては、全銀協は2023年度までに、手形や小切手などの交換枚数の約6割を電子的な方法に移行する目標を立てているようです。残り4割の手形や小切手は、顧客から取立を依頼された銀行がイメージデータに変換し、全銀協が設置予定の「電子交換所」に送信して決済する方向で準備を進めているとの事です。その他、政府は、2024年をめどに約束手形の支払期日を最長120日サイトから60日に短縮するとの方針も示しています。
以上のようなことから、今後、計画通りにいかないとしても、手形は遅かれ早かれ廃止ないしは取引量の減少に伴う消滅と捉えて良いかと思います。そうなると、手形を利用している企業にとっては必ず資金繰りの悪化という問題に直面する事とになります。それでなくても、コロナ禍で資金繰りが悪化しているクライアント様が多いことと思います。そんな状況下である今だからこそ、いま一度、自社の資金繰りについて考えてみてはいかがでしょうか?期限が決まってから行動するのではなく、今後起きるであろう事象について事前に手を打つことが、企業経営にとっての最大の武器と考えます。
何をしたらよいか分からないと感じられた方は、担当者にご質問ください。
自社に合った資金計画を作成し、この極難を一緒に乗り越えていきましょう。
毎月、職員達が交代でつれづれなるままに綴っております。