花谷 隆之
11月になり一段と寒さが深まってきました。典型的な夏のスポーツであるサーフィンが趣味という私にとって、冬の寒さはどちらかというと苦手です。
しかし、冬には冬の楽しみがあります。冬は空気がきれいで星の観測に適していたり、街を歩くとあちらこちらにイルミネーションが輝き、心が躍ります。そして何よりも食べる事が大好きな私にとって、冬の最大の楽しみは、まさにこれからシーズンが到来するジビエ料理を食べることです。
ジビエ(gibier)とは狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を意味する言葉(フランス語)で、ヨーロッパでは貴族の伝統料理として古くから発展してきた食文化です。
具体的には最近は少しポピュラーになっている鹿(シュヴルイユ)・猪(サングリエ/マルカッサン)をはじめ、野ウサギ(リエーヴル)・熊(ウルス)・ライチョウ(グルーズ)・野ウズラ(ペルドリ)・キジ(フザン)・野鳩(ピジョン・ラミエ)・山シギ(ベカス)、マガモ(コルヴェール)等のお肉のことをいいます。
日本では、11月15日〜2月15日まで狩猟が解禁となり、ジビエのシーズンが始まります。
大自然の中で野山を駆け巡り大空を舞った天然のお肉は、脂肪が少なく引き締まり、栄養価も高いといわれています。例えばシカ肉は牛肉と比較してタンパク質・ミネラルは「約1.4倍」、鉄分は「約1.7倍」と栄養豊富でありながら、脂質は「1/33」、カロリーは「1/3」と、まさに健康的には良い事ずくめの冬季限定のごちそうといえます。
ジビエ料理では、動物の尊い生命を奪う代わりに生命に感謝を捧げ、肉から内臓、骨、血液に至るまで全ての部位を余すことなく料理に使うという精神があります。そのため、お肉料理に使用するソースは血をワインでアレンジしたものが多く、これがワインに非常に良く合います!
また、ジビエの特徴の一つとして野性味あふれる独特な風味が挙げられます。この独特な風味はジビエの種類によって様々な風味を味わうことができ、これもジビエを楽しむ醍醐味の一つでもあります。しかし、やはり普段食べ慣れないこの独特な風味を苦手とされる方も多くいらっしゃいます。この風味については鮮度・調理法が影響する部分が多いので、初めて挑戦される方はジビエを得意とするフランス料理店に行かれるのが一番良いと思います。
また、参考程度に私の独断と偏見でいえば、キジ、鹿あたりは比較的独特な風味が少なく食べやすいと思います。もし、ワイルドに(笑)野性的な風味を味わってみたいという方は野ウサギ、野鳩、野ウズラ、ライチョウ、あたりがお薦めです。
また、最近は日本の多くの地方自治体で環境・農作物被害等の鳥獣被害対策と地域活性化を一体化させて行う試みから、その地域で採れたジビエをその地域のブランドとする取組みが積極的に行われております。これらの取り組みの一助となることができるのも、ジビエ料理を食べる醍醐味の一つかもしれません。
皆様も冬が運んでくる森からの贈り物を一度ご堪能してみてはいかがでしょうか?