神崎 裕子
「ビールと言えば、キリンラガービール!」
私が幼少の頃、法事や親戚の集まりでは必ずラガービールの瓶が並び、その匂いがザ・ビールという記憶でした。平成になり、アサヒビールにシェアを奪われた時には、キリンは不動だと思い込んでいましたから驚きました。特に大阪の飲食店では「キリンとアサヒどちらにしますか?」と尋ねられると、私の周りでは「アサヒで」と答える方が多いように、人気が逆転したのは明らかに感じます。
先日、テレビでリニューアルされた『一番搾り』の販売奮闘記が放映された後、普段はビールを飲まない私ですがエールを送りたくなり、購入して飲んでみますと、コクと甘みが感じられビールの美味しさと匂いで懐かしい気分に浸りました。その数日後、キリンビール元副社長 田村潤氏の講演を聞く機会がありましたので、少しご紹介したいと思いました。
圧倒的なシェアだったキリンが、スーパードライの勢いを止めるために安売りを命じられ、当時本社営業企画部長代理の田村氏は「ブランド価値の棄損を招く価格競争はお客様に良いものを届けられない」と反発したことが原因で、事実上左遷のような扱いで高知支店長となり、そこのスタッフとともに『殿様商売』から一変、『ドブ板営業スタイル』で粉骨砕身し、最終的には副社長の要職を務め、トップシェア奪回に成功したお話でした。
大切なのは「現場力」と「理念」。「何のために働くのか」「自分の会社の存在意義は何なのか」という理念を自分で考え抜き他人事から自分事に変わった責任感、そして自発的な目標設定をたて行動を起こす。当たり前のことを、当たり前にやる。高知の人々の地元愛に訴えるようなアピールをし、決めたことはやりきり、必ず
勝つ精神をスタッフが理解し、率先してやっていった結果、「人脈」や「サービスへの高評価」が広まったことが、高知で「V字回復」した要因のようでした。こういうモチベーションをみんなに持たせることができるリーダーとは、本当にすごい方なのだと聞き入りました。現場でもがき、突破口を見つけ、量が質を生む活動をし、成果を得て、従業員に働く喜びを与えることができたとお話しされており、最近のワークライフバランスの話よりも身体に馴染みました。それは私自身が、かなり昭和の泥臭い人間であると同時に大企業の事とは思えない、映画のようなサクセスストーリーのように感じたからです。
最後のお話で、「成長すると良いDNAが作られ、人のために頑張るとDNAが良くなる。宇宙からの後押しされたような結果、奇跡のような事だった。人間とは経験していない事はわからない。」とおっしゃられて、同感する事が多く、家庭でも職場でも言えることだと感じ、自分の人生に於いても年齢には関係なく行動しようと思いました。当たり前の事が中々できていない日常の生活の中で、横着や都合の良い言い訳はやめようと改めて考えさせられました。
今度はラガービールを飲んでみようかな〜。