北島 英子
さて、2月と言えば日本の年中行事である「節分の日」があります。節分は季節の移り変わりの目安となる日の一つで、立春・立夏・立秋・立冬の各季節の始まりの日の前日のことを言うそうです。とくに江戸時代以降は立春の前日を指す場合が多いと言われています。そして宮中では「延喜式」が行われます。
節分の日には邪気を払うために「福は内、鬼は外」と言って福豆を撒き、数え年の分だけ豆を食べ、その年の干支で縁起がいいとされる方角=恵方に向かって、七福神に因んでかんぴょう、きゅうり、しいたけ、伊達巻、うなぎ、でんぶ等の七種類の具を入れた太巻きを、目を閉じて願い事を思い浮かべながら無言で丸かぶりします。
恵方巻きを食べるのはもともと関西の風習で、福を食べる・福を巻き込むという意味合いを持っています。また、ことわざにある「鬼に金棒」の金棒に見立てて、節分の豆まきで追い出された鬼が落としていった金棒を体に取り入れる(=食べる)ことで、無病息災・商売繁盛など、自分や自分を取り巻く環境に対する抵抗増大や窮地打破などの意味合いももっています。ある説では、豊臣秀吉の家臣・堀尾吉晴が節分の前日に巻き寿司のような物を食べて出陣し、戦いを大勝利に収めたという故事を元にしているとも言われています。
その恵方巻きを食べるという習慣は、昭和初期の大阪の商人の間で行われていました。戦後は一旦廃れましたが、1970年代に大阪市でオイルショック後の海苔の需要拡大を狙って海苔店経営者等が海苔巻のイベントを節分の日にはじめたことや、大阪海苔問屋協同組合が道頓堀で行った海苔の販売促進行事が契機となって復活することになったそうです。現在ではコンビニなどが先駆けとなって全国に広がり、太巻きの具も海鮮などいろんな具材が巻かれ自分好みの太巻きを選ぶ楽しみも増えました。が、その一方では恵方巻きを食べる本来の意図を忘れがちなのではないかとも思えます。
私たち日本人は、おせち料理やお雑煮、七草粥、恵方巻き、など季節やその節目ごとによる言い習わしにちなんだ物をいただきます。
昨年は日本の食文化が世界無形遺産に登録されたこともありますので、今年1年はそういったことを意識して食を楽しみたいと思います。