ようやく厳しい暑さが過ぎ、過ごしやすくなってきました。今年の夏は節電を実施された方が多くいらっしゃった(当事務所も私個人も節電を実施しました)ので、この季節に吹く風は例年以上に心地よく感じておられるのではと思います。
さて、毎年この時期になると新聞には税制改正の記事が載ることが多くなるので、以下では少し税制改正の一部についてお話しさせていただきます。
現在、政府は平成23年12月の「平成23年度税制改正大綱」発表に向けて各税目で税制改正の素案を作成しております。その中で注意すべき改正の一つとして「相続税の基礎控除縮小」があります。改正内容は以下の通りです。
現行の基礎控除 = 5,000万円+1,000万円×法定相続人の数
→ 改正後の基礎控除 = 3,600万円+ 600万円×法定相続人の数
相続税は相続財産の金額が基礎控除の額以下であれば税額は発生せず、申告も必要ありません。現行の基礎控除ではほとんどの相続において相続財産が基礎控除範囲内で収まり、相続税がかかるのは全相続の5%未満と言われています。しかし、今回の改正が通れば基礎控除が大幅に下がるので、相続税が課税される相続が大幅に増えることになると予測されます。それにより、これまで相続税は関係ないと考えていた人に関しても相続税対策が必要となる場合が出てきます。そこで、相続税対策を検討する際に役立つポイントをいくつか列挙します。
@ 現時点の財産評価額を知ることが相続税対策のスタート
→ここから相続税の課税の有無や、現時点での相続税額を知るための基礎となります。
A 相続税は財産を誰に相続するかによって税額が変わる
→この項目を踏まえ、できる限り税務上有利な遺産分割を行いましょう。
財産を誰が相続するかによって財産評価額を減額できる(財産評価額が高ければ相続税も高くなる)特例適用の可否が異なってきます。また、将来相続人間で争い等が起きないように遺言を残すことも重要です。
B 相続税は相続する財産の形態(例えば現預金と不動産)によって税額が変わる
→相続人が将来不動産の購入を検討しているなら、相続前に不動産を購入する(現預金を不動産に変える) 等も財産評価額を下げる対策となる場合があります。相続人とライフプランの話をしておくことが大切です。
C 生前に財産を相続人となる方へ移動させることも相続税対策となり得る
→贈与税の基礎控除110万円を活用し、相続財産となるものを毎年相続人へ贈与により移していく方法 等もあります。贈与した財産評価額が110万円までなら贈与税はかかりません。この110万円の枠は毎年使えます。
このように、相続税は今後多くの方にとって身近な問題となり得ます。一言で相続税対策と言っても、その人の財産状況や親族状況によっても何通りもの方法があり、税務上の注意点も多く存在し複雑な制度となっております。また、相続税対策は一朝一夕ではできるものではありませんので、早い時期から検討する必要があると言えます。今後相続税の対策をご検討される場合や、相続に関してお悩みの方は担当者にご遠慮なくお尋ねください。
花谷 隆之
毎月、職員達が交代でつれづれなるままに綴っております。