社員税理士 花谷 隆之

 皆様は管理会計といえばどのようなイメージをお持ちでしょうか。
「財務諸表の数字を扱う専門的で難しいもの」というイメージをお持ちではないでしょうか。しかし、管理会計は財務諸表の数字を扱うものだけではありません。もっと身近なビジネス活動を数字に変換し、経営判断や現場のオペレーション改善に役立てるという意味合いのものもあります。
今回は管理会計をより身近に感じていただけたらと思い、少し身近な意味での管理会計の一つをご紹介します。

この手法にとってまず重要となるのは、管理・改善のために「何を測定して「見える化」するのか」ということです。ここで測定を行う指標はKPI(重要業績指標)と呼ばれます。このKPIは時と場合、業種や目的に沿って全く異なるものを設定することになります。
少し身近なKPIの例をご紹介します。

良好な夫婦関係の持続を目的とした場合、KPIとして「1カ月で一緒に食事をした回数」、「プレゼント数とその平均金額」等が考えられます。これらを継続して測定していく事で、「プレゼント数とその平均金額」よりも「1カ月で一緒に食事をした回数」の方が二人の良好な関係に寄与するという事が分かるかもしれません。
また、夫婦でなくカップルの段階であれば、「プレゼント数とその平均金額」や「LINEの送信回数」が有用なKPIになるかもしれません。
目的と関連するKPIを発見すれば、それを継続して遂行・測定・管理し、今後のオペレーションの改善につなげていくことができます。

前述は個人的趣味の様な例となりましたが(笑)、拡大戦略のIT企業であればユーザー数確保の為に「(無料のものも含む)コンテンツ数」、営業会社・部門であれば「一カ月当たりの顧客への訪問数」、等をKPIとして測定・管理していくことも考えられるでしょう。
有効なKPIは、その企業・部門、置かれている状況等で異なります。経営者や幹部が現在の会社の戦略・目的に沿ったKPIを自ら考案・設定し、そのステージに応じて変化させていく事が重要となります。設定の際はすぐに関連性が分からなくとも、継続して測定を行ったり、他のKPIの設定を試みる等してデータを蓄積していくことが必要です。一度有効なKPIが設定できれば部門や現場ごとでKPIの遂行を徹底し、結果をチェックするといったPDCAサイクルが出来ます。

現在、勘のみに頼らない羅針盤をもった経営を行うための事業計画の重要性がよくクローズアップされています。この事業計画を作成する際に、「戦略の明確化」、「戦略の事業計画数字への落とし込み」という手順に加え、「事業計画数字を達成する為に各部門・各社で守るべきKPIの設定」を考えてみるのも有意義かもしれません。