厚生労働省の審議会は今年度の最低賃金を全ての都道府県で28円引き上げ全国平均が現在の時給902円から930円とする目安を示しました。28円の引き上げは、2019年度の27円を上回り、最低賃金が時給で示されるようになった2002年度以降で最も大きくなっています。
昨年度は、新型コロナウイルスの影響で雇用を守ることが最優先とされ、審議会は引き上げの目安を示すことができませんでしたが、今年度は ワクチン接種がすすんでいることや、経済指標の一部で回復がみられること、経営が厳しい企業には支援策が検討されていることなどを考慮したとしています。引き上げ額の目安は地域の経済実態などにあわせて、都道府県を4つのランクに分けて、都市部で高く、地方で低く金額が示されるケースが多いですが、今回は、地域間格差への配慮や都市部で雇用情勢が悪化していることを踏まえ同じ金額が示されました。政府の全国平均1,000円とする骨太の方針に向け今回の目安が決まったようです。このままでは5年以内に全国平均1,000円になりそうです。今年度の最低賃金を大幅に引き上げる目安を示したことについて、日本商工会議所・全国商工会連合会・全国中小企業団体中央会の3団体は「東京で4回目となる緊急事態宣言が発出されるなど先が見通せない経済情勢の中、大幅な引き上げとなったことは極めて残念であり、到底、納得できるものではない。中小企業の窮状、飲食業や宿泊業などの実態や痛みを理解していない結論と言わざるをえない。多くの経営者の心が折れ、廃業がさらに増加し、雇用に深刻な影響が出ることを強く懸念する」というコメントを発表しています。
2020年大阪府最低賃金964円 賃上げ後992円
兵庫県900円➡928円 奈良県 838円➡866円 京都府909円➡937円 滋賀県868円➡896円
和歌山県831円➡859円 岡山県834円➡862円 香川県820円➡848円 沖縄県 792円➡820円
この目安が最低賃金として施行されるのは10月からになると思います。10月からの時給計算を改定することは人件費の増加になり、固定給では、1日8時間、週5日勤務 月22日勤務すると992円×8時間×22日=174.952円が最低賃金となります。
約3%の賃上げは生産性をそれ以上引き上げる必要があります。そのために機械化やIT化、労働の合理化をしなければ人件費倒れとなり経営が成り立たなくなります。
菅政権は「中小企業を淘汰する」と言っていたのが益々現実となってきたような気がします。しかし、中小企業が雇用の下支えしているのも事実です。また、パートさんは扶養の範囲内で働いているので、一人当たり人件費は上がらず、総人件費だけが上昇することになるような気がします。総人件費率の上昇に対応する為には、生産性向上が求められてきます。
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