贈与とは民法549条「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」と規定しています。つまり贈与は、無償で財産を与える契約です。契約であることから、当事者の合意が必要です。同550条では「書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。」つまり贈与は諾成・不要式の契約であり、口頭の意思表示のみで成立します。しかし、書面によらない贈与については、当事者がその効力を消滅させることができるとして、拘束力を弱めています。このように贈与は贈与者と受贈者が財産を無償で授受する契約になり、特に財産を貰う者がそれを認識している事が必要になります。
親が子供名義の預金にお金を預けることは贈与ではなく、単に子供の名義を借りた親の預金になります。妻名義の預金も同様となります。
専業主婦である妻が夫の給与を節約して妻名義の預金にへそくりを貯めた場合、上記549条の与える受諾する行為になりませんから、その預金は夫の妻名義の預金となり夫の財産となります。名義預金にしないためには、贈与を成立させるために贈与契約書を作成し、そこに記載された金額を妻名義の預金に振り込むことがポイントになります。
子供の預金も同じ取り扱いとなります。それではお年玉や祝金はどうなるのかといいますと、「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの」と規定され贈与税はかからないものと規定しています。つまりお年玉や祝金を貰った子供の名義の預金にしておいても大丈夫です。
また、生活費の取り扱いとしては、夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの。ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、治療費・養育費その他子育てに関する費用などを含みます。また、教育費とは、学費や教材費・文具費などをいいます。なお、贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。したがって、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかることになります。
子供や孫への贈与は贈与を受ける者が貰ったという認識が必要ですので、お年玉や祝い金以外での贈与は贈与契約書を作成しなければ贈与を立証することが困難かと思われます。未成年者の場合は親権者を記載した契約書が必要となります。
贈与税の特例として令和5年3月31日迄教育資金の贈与(1,500万円)結婚資金(1,000万円)迄の資金の一括贈与が非課税となっています。(その目的以外にはその資金は使用できません)
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