梅雨に入り、毎日が鬱陶しい時期になりました。世間では大飯原子力発電所の再稼働に伴う節電や計画停電、消費税の増税の審議、ヨーロッパの経済問題による円高等々政治経済が目まぐるしく変化しています。
 
 今年になってスティーブ・ジョブズの本を3冊読み、彼の人生観、仕事における発想法に感銘を受けましたので紹介したいと思います。

 スティーブ・ジョブズ氏は皆さんご存知のように、アップル社のCEOとしてマキントッシュやiPodなど既存の製品の全てを変えてしまう革新的な製品を市場に登場させました。その為、製品自体の素晴らしさに目をとらわれがちですが、その製品が誕生するまでの彼の妥協を許さない考えと経営のやりかたが今日のアップル社を育て上げたのだと思います。
 アップル社の強みはiPodやiPhoneなどの製品力だけではなく、消費者からは見えない「CCC」の力があったからです。CCCとはキャッシュ・コンバージョン・サイクルの略で、売掛金と在庫の回転日数から買掛金の回転日数を差し引いた値です。ソニーやパナソニックが約30日であるのに対しアップルはマイナス50日と通常では考えられない数値です。
このマイナスとは、理論上は生産を開始する前に代金回収を完了していることです。実際は、アップル社の売掛金回収が約20日に対し、買掛金の支払いが約90日後でした。つまり生産を開始する前に代金回収が完了することになります。このCCCの値を小さくすれば会社の現金が増えてくることになり、今やアップル社の現金は約760億ドルで、アメリカ政府の現金残高を超えています。これはジョブズの方針を理解し実行した生産物流部門のたゆまぬ努力の賜物であることは言うまでもないと思います。
 また彼は病気と闘いながらアップル社の経営をしていましたが「あなたの時間は限られている。だから、他人の人生を生きてはいけない。」という言葉を残しています。毎日仕事で多忙な日々を過ごしていると、つい自分を見失い、本来の志を忘れて生きてしまっているように感じます。このままでは仕事を辞めた時や休日に寄りかかるものがなくなり茫然自失に陥ってしまうことになりかねない。定年なんてまだ先だと考えている人は、今の状態がずっと続くと思いこみ、同じことを繰り返し続けていることが多いと思います。
 ジョブズ氏は毎朝鏡に向かって「もし今日が人生最後の日だったら、今日やろうとしていることは自分が本当にやりたいことだろうか?」と自問してきたそうです。そして、『ノー』という答えが何日も続くようなら、何かを変えるべき時が来たととらえて行動してきたそうです。自分も一度立ち止まって自分は本当に自分の人生を生きているのかと考え直すことは重要であるかもしれませんね。
 素晴らしい経営者は、経営手腕が長けているだけでなくその発想方法もまた世間に感銘を与え後世に残る製品や会社そして名言を残してゆくのだと思いました。

以上
代表社員 税理士 福田 重実