平成27年から相続税が増税されます。相続税や贈与税の相談では財産を生前に分割する方法はないかという事案が多くなってきています。相続では遺産の分割で争いが発生することが多く見受けられ、問題となるのは現金以外の不動産や非上場株式や同族会社に貸付金がある場合や借入金等の債務が存在する場合等その遺産を取得しても相続税の納税負担が重い場合です。
将来の相続において相続人の意思で財産を分割したい場合には遺言制度が活用されています今回はこの遺言について紹介します。
遺言の指定事項
遺言の最も重要な機能は、遺産の処分について、被相続人の意思を反映させることにあります。被相続人の意思である遺言を尊重するため、相続規定には任意規定が多く(ただし遺留分規定等強行規定も少なくない)、遺言がない場合は、民法の規定に従って相続が行われます。これに対し、遺言を作成しておくと、遺産の全体または個々の遺産を誰が受け継ぐかについて自らの意思を反映させることができます。遺贈の方法により、相続人以外の者に遺産を与えることも可能です。遺言がない場合、通常、相続手続には相続人全員で共同して遺産分割協議書を作成し金融機関、法務局などに提出しなければなりません。相続人の間で合意が得られない場合、相続人が行方不明となっていたり遠方に居住している場合などには、遺産分割協議書の作成は困難になります。相続税の申告期限(10か月以内)に分割が確定しない場合は、各種の軽減特例を受けられないなどのデメリットがあります。遺言でどの財産を誰に相続させるかを明確に記載することにより、当該相続人は不動産の所有権移転登記を単独で行うことができます。また、遺言で遺言執行者を指定することにより、預貯金の払戻しを円滑に行うことができます。このように遺言には、相続に関するさまざまな手続に関する遺族の負担を軽減するという実務上の利点があります。
遺言書の方式
遺言の方式には普通方式遺言と特別方式遺言があります。
普通方式遺言
自筆証書遺言
条件遺言書の全文が遺言者の自筆で記述(代筆やワープロ打ちは不可)日付と氏名の自署押印してあること(実印である必要はない)遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。
公正証書遺言
遺言内容を公証人に口授し、公証人が証書を作成する方式。
証人2名と手数料の用意が必要となる。推定相続人・受遺者等は証人となれない。公証人との事前の打ち合わせを経るため、内容の整った遺言を作成することができる。証書の原本は公証役場に保管され、遺言者には正本・謄本が交付される。
遺言書の検認は不要である。公証役場を訪問して作成するほか、公証人に出向いてもらうことも可能である。
秘密証書遺言
遺言内容を秘密にしつつ公証人の関与を経る方式。
証人2名と手数料の用意が必要であるほか、証人の欠格事項も公正証書遺言と同様です。代筆やワープロ打ちも可能ですが、遺言者の署名と押印は必要であり、その押印と同じ印章で証書を封印する。代筆の場合、証人欠格者以外が代筆する必要がある。遺言者の氏名と住所を申述したのち、公証人が証書提出日及び遺言者の申述内容を封紙に記載し、遺言者及び証人と共に署名押印する。遺言書の入った封筒は遺言者に返却されます。自筆証書遺言に比べ、偽造・変造のおそれがないという点は長所ですが、紛失したり発見されないおそれがあります。遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません。
特別方式遺言
普通方式遺言が不可能な場合の遺言方式。上記の普通方式遺言が可能になってから6ヶ月間生存した場合は、当該遺言は無効となります。
危急時遺言
一般危急時遺言、難船危急時遺言、隔絶ち遺言等があります。一般危急時遺言とは、疾病や負傷で死亡の危急が迫った人の遺言形式。証人3人以上の立会いが必要。証人のうちの1人に遺言者が遺言内容を口授する。遺言不適格者が主導するのは禁止されます。口授を受けた者が筆記をして、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、または閲覧させます。各証人は、筆記が正確なことを承認した後、署名・押印します。20日以内に家庭裁判所で確認手続を経ない場合、遺言が無効となります。
遺言執行者
遺言により遺言執行者が指定されている場合、遺言執行者が就職し、直ちに任務を開始します。通常、遺言執行者がなくても相続人が遺言の内容を実現することが可能ですが、手続を円滑に進めるためには、遺言執行者を指定しておく方が良いようです。遺言執行者は、未成年者及破産者以外であれば相続人でもなれ、いないときは、家庭裁判所は利害関係人の請求によって、遺言執行者を選任することができ遺言に定めた報酬または家庭裁判所の定める報酬を受けることになります。遺言執行者は相続人の代理人とみなされ、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができません。不動産の登記について、遺贈の場合は遺言執行者が登記義務者となるが、「相続させる」遺言の場合は、相続開始時に承継されたとみなされ、相続人が単独で登記することができます。
遺言撤回の自由
遺言は遺言者の最終意思の確認するものであることからいつでも上記遺言を撤回することができますので、その内容は後日変更することができます。
このように遺言書を作成することより相続人の意思を尊重し相続の財産分割をスムーズに行い親族間の争続を防ぐ役割があると思います。