代表社員 福田 重実

 相続法が改正され、今年から施行されますので、簡単にご紹介したいと思います。

(1)「配偶者居住権」の創設
 配偶者居住権は、配偶者が相続開始時に被相続人が所有する建物に住んでいた場合に、終身または一定期間、その建物を無償で使用することができる権利です。これは、建物についての権利を「負担付きの所有権」と「配偶者居住権」に分け、遺産分割の際などに、配偶者が「配偶者居住権」を取得し、配偶者以外の相続人が「負担付きの所有権」を取得することができるようにしたものです。上記のとおり、配偶者居住権は、自宅に住み続けることができる権利ですが、完全な所有権とは異なり、人に売ったり、自由に貸したりすることができない分、評価額を低く抑えることができます。このため、配偶者はこれまで住んでいた自宅に住み続けながら、預貯金などの他の財産もより多く取得できるようになり、配偶者のその後の生活の安定を図ることができます。
例:相続人が妻と子1人、遺産が自宅(2,000万円)と預貯金3,000万円だった場合
妻と子の相続分=1:1 妻2,500万円、子2,500万円

(画像をクリックすると拡大されます)
※配偶者居住権を取得した場合、その財産的価値相当額を相続したものとして扱われます。


(2)自筆証書遺言に添付する財産目録の作成がパソコンで可能に
これまで自筆証書遺言は、添付する目録も含め、全文を自書して作成する必要がありました。その負担を軽減するため、遺言書に添付する相続財産の目録については、パソコンで作成した目録や通帳のコピーなど、自書によらない書面を添付することによって自筆証書遺言を作成することができるようになります。

(画像をクリックすると拡大されます)


(画像をクリックすると拡大されます)
(3)法務局で自筆証書による遺言書が保管可能に
自筆証書による遺言書は自宅で保管されることが多く、せっかく作成しても紛失したり、捨てられてしまったり、書き換えられたりするおそれがあるなどの問題がありました。そこで、こうした問題によって相続をめぐる紛争が生じることを防止し、自筆証書遺言をより利用しやすくするため、法務局で自筆証書による遺言書を保管する制度が創設されます。
今までは自筆で遺言状を作り家庭裁判所確認を取るか、公正証書での遺言状でしか効力がありませんでしたが、パソコン作成や法務局での保管が可能になり、便利になりましたので、争続にならないようにこれの利用もお考え下さい。

この法律の公布は、平成30年7月13日でその施行は公布から1年超えない範囲内で施行されます。例外として自筆証書遺言は平成31年1月13日から施行されます。その他の日は決定していません。
(法務省HPより)