代表社員 福田 重実
総務省統計によると平成25年10月1日現在における我が国の総住宅数は6063万戸で、5年前と比較すると、304万戸の増加しており、増加率は5.3%となりました。平成10年からの15年間では、総住宅数が1000万戸以上増加しています。住宅のうち、空き家についてみてみると空き家数は820万戸となり、5年前に比べて63万戸増加しました。空き家率(総住宅数に占める割合)は、平成10年に初めて1割を超えて11.5%となり、平成25年には13.5%と、平成20年に比べ0.4ポイント上昇し、空き家数・空き家率共に過去最高となりました。別荘等の二次的住宅数は41万戸で、二次的住宅を除く空き家率は12.8%となりました。
(右図はクリックで拡大してご覧になれます)
認識すべき周辺に与える空家問題と所有者が抱える問題
放置された空き家がもたらす問題としては、防災性や防犯性の低下、衛生の悪化・悪臭の発生、ごみの不法投棄や風景・景観の悪化、雑草の繁茂などが挙げられます。これらは公害などと同様に、ある者の行動(空き家の放置)が周辺住民等に対して、不利益や損失を及ぼす外部不経済の典型例とされます。
空き家の所有者側も問題を抱えています。空き家の損壊や倒壊等により周辺家屋や通行人等に危害を与えた場合、所有者に過失がなくても損害賠償責任が及びます。遠隔地に空き家を保有している場合などは、こうした工作物責任に十分な注意が必要です。また、空き家は傷みが早く建物価値の低下を招きやすいほか、第三者による占有や盗難、地震等の災害リスクにさらされることもあります。
保有コストも無視できず、2015年2月に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、危険な特定空家等に該当し除却・修繕等の勧告を受けた場合は、固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外されるほか、維持管理コストや一般住宅に比べて高い損害保険料がかかる場合があります。
空家対策特別措置法
少子高齢化の影響により、今後、より一層空き家が増えることが想像されます。その対策として、2016年5月「空家対策特別措置法」が施行されました。この法律が定義する「空き家」「特定空き家」とは何か。また、特定空き家に指定されるとどうなってしまうのか。
空き家と特定空き家の違い
空家対策特別措置法が定める空き家の定義とは、以下の2点を満たすことです。
・建築物又はこれに附属する工作物、敷地(立木など、土地に定着するものを含む)
・常に居住その他の使用が行われていないこと
現在所有者が管理している空き家は法律の対象外となっており、法律が施行されても変更点は
ありません。問題となるのは、「特定空き家」に指定された場合です。
以下の4つのいずれかに当てはまる場合特定空き家となります。
・倒壊が著しく保安上のおそれのある状態
古くなり破損している建物、門や看板、屋根瓦など倒壊のおそれがある建物など
・著しく衛生上有害となるおそれのある状態
ゴミや汚物の放置による異臭がある、異臭により害獣が発生・繁殖するなどして衛生上有害となるおそれがある建物など
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
落書きやツタ、立木の繁殖、ゴミ等が放置され景観を損なっている状態。周辺との景観が著しく不調和である状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
立木の散乱や倒壊、動物が住み着くことでの鳴き声や糞尿の臭気、雪落の危険性、不審者の侵入など、近隣住民の生活に危険や悪影響を与えている状態
つまり、特定空き家は「放置されており危険な状況になっている空き家」「周囲を不安、不快にさせている空き家」のことと言えるでしょう。
田舎の不動産を取得し、未利用になっているものは気を付けなければなりませんね。早いうちに売却等を検討するのも一考だと思います。