代表社員 福田 重実
今年中に住宅を売却したり取得したりした方又は予定の方は、来年の確定申告をしなければなりませんので、それに向けた居住用の住宅に関する税について紹介したいと思います。
紙面の都合上今回で説明できないものは次回以降にご紹介します。
1 住宅を売却した場合
@居住用財産の買換えの特例
A居住用財産の3,000万円控除
B軽減税率の適用
C相続財産を売った場合の譲渡所得の特例
2 住宅ローン控除制度
@控除対象となる借入金
A借入金の借換
B年末の借入金残高
C家屋の敷地を取得するための借入金
D店舗付き住宅の控除
E夫婦共有で住宅を取得した場合
F譲渡損失とローン控除
G住民税のローン控除
3 その他の税
@新築住宅の固定資産税の減額
A新築住宅の保存登記と登録免許税
4 贈与税
@直系尊属からの住宅取得資金の贈与
A相続時精算課税
B配偶者への住宅取得資金等の贈与 等があります。
今回は、住宅を売却した場合の居住用財産の買い替えの特例について紹介します。
特定のマイホーム(居住用財産)を、平成29年12月31日までに売って、代わりのマイホームに買い換えたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます(譲渡益が非課税となるわけではありません。)。これを、特定の居住用財産の買換えの特例といいます。
例えば、1,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却し、7,000万円のマイホームに買い換えた場合には、通常の場合、4,000万円の譲渡益が課税対象となりますが、特例の適用を受けた場合、売却した年分で譲渡益への課税は行われず、買い換えたマイホームを将来譲渡したときまで譲渡益に対する課税が繰り延べられます。この制度を図で説明すると次のとおりです。
(注)説明を簡潔にするため、減価償却などは考慮していません。
この場合、課税が将来に繰り延べられるとは、上記の例により説明すれば、買い換えたマイホームを例えば将来8,000万円で売却した場合に、売却価額8,000万円と購入価額7,000万円との差額である1,000万円の譲渡益(実際の譲渡益)に対して課税されるのではなく、実際の譲渡益1,000万円に特例の適用を受けて課税が繰り延べられていた4,000万円の譲渡益(課税繰延べ益)を加えた5,000万円が、譲渡益として課税されるということです。
適用要件
1.自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。
なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年目の12月31日までに売ること。
(注) 住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の3つの要件全てに当てはまる
ことが必要です。
イ.その敷地は、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるものであること。
ロ.その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年目の年の
12月31日までに売ること。
ハ.家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
2.売った年の前年及び前々年にマイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
(措法35条第3項に規定する空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例を除く。)又はマイホームを売ったときの
軽減税率の特例若しくはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていない
こと。
3.売ったマイホームと買い換えたマイホームは、日本国内にあるもので、売ったマイホームについて、
収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けないこと。
4.売却代金が1億円以下であること。
売った人の居住期間が10年以上で、かつ、売った年の1月1日において売った家屋やその敷地の所有期間が共に
10年を超えるものであること。
5.買い換える建物の床面積が50平方メートル以上のものであり、買い換える土地の面積が500平方メートル以下の
ものであること。
6.マイホームを売った年の前年から翌年までの3年の間にマイホームを買い換えること。また、買い換えたマイホーム
には、一定期限までに住むこと。買い換えたマイホームを住まいとして使用を開始する期限は、そのマイホームを
取得した時期により次のようになります。
イ.売った年かその前年に取得したときは、売った年の翌年12月31日まで
ロ.売った年の翌年に取得したときは、取得した年の翌年12月31日まで
7.買い換えるマイホームが、耐火建築物の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたもの
であること。 ただし、耐火建築物以外の中古住宅及び耐火建築物である中古住宅のうち一定の耐震基準を満たす
ものについては、建築年数の制限はありません。
8.親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。
特別の関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある
人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
買換えの特例は売却した住宅が値上がりしていて居住用の3,000万円を超える利益が出た場合、新たに居住用の住宅を取得する場合に、その利益を繰り延べることになります。しかし将来新たな住宅を売却した時は、繰り延べた利益について課税されることになりますので注意が必要です。