平成29年の確定申告の時期が近づいてきました。今回は医療費控除の改正についてご紹介します。
従前の医療費控除
従来の医療費控除は「医療費の領収書を確定申告に添付して提出する」というもので、医療費の領収書を集計し、領収書を封筒に入れて確定申告に添付して税務署に提出することでした。
今回の改正は以下の通りです。
⑴領収書等の提出が不要になる
領収書そのものを確定申告書に提出する必要がなくなります。つまり、これまでのようにホチキスなどで止めたり、封筒に入れて提出したりという作業がなくなるのです。
但し、提出する代わり、確定申告期限(通常3月15日)から5年間、納税者が保管しなくてはなりません。医療費控除の中身によっては、この5年間のどこかで、税務署から確認のために保管している領収書を提出するよう求められる可能性もあります。分かりやすく考えると、「領収書の倉庫が税務署から納税者の自宅に変わっただけ」です。
⑵「医療費控除に関する明細書」の提出が必須になる
領収書の提出に代えて今後はこの明細書の提出が必要です。
従来は領収書の提出が必須で、明細書はあくまでも分かりやすさのための参考書類に過ぎなかったのです。また、従来の明細書では「医療費の区分」が空欄でしたが、今後は次の4区分にチェックするスタイルになります。
@ 診療・治療 A 医薬品購入 B 介護保険サービス C その他の医療費
⑶医療費通知がある場合は通知を添付し、詳細は記載しなくても良くなります。
健康保険組合などの医療保険者が組合員に発行する医療費通知がある場合には、これを確定申告書に添付すれば、税務署所定の明細書に詳細を記載しなくてもよいことになりました。つまり、領収書集計の手間と、記載の手間も省けるようになりました。ただし、「医療費通知」は時期がかなり遅く通知されるので29年度だけが対象になりますので、領収書等を記入した明細書との併用になるのではないかと思います。
⑷経過措置等
セルフメディケーション税制がスタートし、従来の医療費控除と選択適用になったという変更点があります。
医療費控除は所得金額の合計額の5%か10万円かのいずれか少ない額を超えないと適用できません。 医療費控除に関する明細書の記載方法は、上記変更点を除けば従来とほぼ同じです。また、平成29年分から平成31年分については、医療費の明細書ではなく、従来通り、医療費の領収書を提出してもよいこととなっています。
セルフメディケーション税制
⑴制度の概要
健康の保持増進及び疾病の予防として一定の取組を行っている方が、平成29年中に自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族のために12,000円以上の対象医薬品を購入した場合には、「セルフメディケーション税制」(通常の医療費控除との選択適用)を受けることができます。
⑵適用を受けられる方
セルフメディケーション税制の適用を受けようとする年分に、「健康の保持増進及び疾病の予防に関する一定の取組」を行っている居住者が対象となります。
一定の取組みとは、次の取組をいいます。
@保険者(健康保険組合等)が実施する健康診査【人間ドック、各種健(検)診等】
A市町村が健康増進事業として行う健康診査
B予防接種【定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種】
C勤務先で実施する定期健康診断【事業主検診】
D特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導
E市町村が健康増進事業として実施するがん検診
※申告される方が一定の取組を行っている必要があります
(申告される方と生計を一にする配偶者その他の親族の方が「一定の取組」を行っている必要はありません。)。
※「一定の取組」に要した費用は控除の対象となりません。
⑶対象医薬品の範囲
対象医薬品は、医師によって処方される医薬品(医療用医薬品)から、薬局やドラッグストア等で購入できる医薬品に転用された医薬品(スイッチOTC医薬品)とされています。
具体的な対象医薬費品の一覧は、厚生労働省ホームページをご確認ください。
(注)セルフメディケーション税制の対象となる医薬品の購入費用であっても、それが治療や療養に必要な医薬品の
購入の対価であれば、通常の医療費控除を受けることを選択した場合は、医療費控除の対象となります。
医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できませんので、注意が必要です。しかし、10万円以下の医薬品がある場合で医療費控除を適用できなかった方は、1年間の総額が12,000円以上で上記の支払が有れば適用になると思われます。
詳しくは、担当者までご質問下さい。