前号では、災害等を受けた場合の雑損控除(所得控除)を説明しましたが、今回は災害減免法に基づく所得税の取扱いついて説明します。
1 軽減又は免除される所得税
災害によって受けた住宅や家財の損害金額(保険金などにより補てんされる金額を除きます)がその時価の2分の1以上で、かつ、災害にあった年の所得金額の合計額が1000万円以下のときにおいて、その災害による損失額について雑損控除を受けない場合は、災害減免法によりその年の所得税が次のように軽減されるか又は免除されます。
2 適用を受けるための手続
災害減免法の適用を受けるためには、確定申告書等に適用を受ける旨、被害の状況及び損害金額を記載して、納税地の所轄税務署長に確定申告書等を提出することが必要です。
3 源泉所得税の徴収猶予及び還付
給与所得者や公的年金等の受給者が災害による被害を受けた場合は、一定の手続をすることにより、源泉所得税の徴収猶予や還付が受けられる場合があります。
災害を受けた給与所得者、公的年金受給者の方の災害による損害金額が、住宅又は家財の価額の2分の1以上で、かつ、その年分の所得金額の見積額が1,000万円以下である場合には、所得金額の見積額に応じて、源泉所得税及び復興特別所得税の全部又は一部について徴収猶予や還付を受けることができます。この場合の住宅又は家財とは、自己又はその者と生計を一にする配偶者その他の親族で、その年の総所得金額等が38万円以下である者が、所有する常時起居する住宅又は日常生活に通常必要な家具、什器、衣服、書籍その他の家庭用動産を言います。別荘や書画、骨とう、娯楽品等で生活に必要な程度を超えるものは含まれません。
また、災害による住宅や家財の損害金額がこれらの価額の2分の1未満、又は、その年の所得金額の合計額が1,000万円を超える場合で、災害による損害金額について雑損控除の適用が受けられると認められるときには、徴収猶予限度額に達するまでの金額について、源泉所得税及び復興特別所得税の徴収猶予を受けることができます。
なお、徴収猶予や還付を受けようとする方は、給与又は公的年金等の支払者を経由して、災害を受けた方の納税地の所轄税務署長(注:還付を受けようとする方は直接納税地の所轄税務署長)に「源泉所得税及び復興特別所得税の徴収猶予・還付申請書」等の書類を提出する必要があります。
注:支払者の源泉所得税及び復興特別所得税の納税地の所轄税務署長に提出してもかまいません(この場合でも、申請者の名宛人は、災害を受けた方の納税地の所轄税務署長としてください。)。
給与所得者が、この源泉所得税及び復興特別所得税の徴収猶予又は還付を受けた場合は、年末調整がされませんので、確定申告により所得税及び復興特別所得税を精算することになります。
以上のように、災害(地震、風水害、火災等)に遭われた方で所得が1000万円以下の方は所得税の免除又は減免の適用を受けることができますが、盗難や横領は適用できません。また、雑損控除と災害減免法による所得税の減免の両方の適用を受けることはできませんので、ご注意下さい。
所得税以外に、相続税でも災害減免法が適用されます。これは、相続により取得した財産が、申告期限までに災害等により被災した場合、その被災した財産を課税価格から控除して申告する(保険金等で補てんされる部分を除く)ことができます。この適用を受ける場合は期限内申告をする必要があります。
法人の場合は、災害等により被害が発生した場合は特別損失としてその被害額を計上できます。また、所轄税務署に申請した場合申告期限の延長や納税の猶予を受けることができます。
最近は災害が多発していますので、何時私達に起こるか分かりませんが、前回や今回に説明いたしましたように、税の側面で役に立つものがありますので、知識として覚えておいて下さい。
更に詳細なことは、担当者までお尋ねください。