代表社員 福田 重実
2017年4月に消費税率が10%に引き上げられます。その時に、軽減税率やインボイス方式を適用すると言われています。
日本においては事務負担の軽減という考え方から帳簿等保存方式が採用されてきました。
この方法は、売上にかかる消費税額から仕入や経費等にかかる消費税額を控除して、納付すべき消費税額を計算する方法です。請求書等に記載する内容は相手先名、日付、商品名、数量、単価等を記載し、税抜経理では消費税を明記し、税込経理では総額を記載することになっています。今までは単一税率のため問題はなかったのですが、今後軽減税率が適用されれば、8%と10%を区分して表示することになります。
インボイス方式とは、仕入側である課税事業者(消費税の納税義務が免除される小規模事業者以外の消費税の納税義務のある事業者)は、売上側である課税事業者が発行するインボイスに記載された消費税額のみを控除することができる仕入税額控除の方式をいいます。EUではこのインボイス方式が採用されています。EUの付加価値税は(日本の消費税も同様です)、基本的に課税事業者が、売上で収受した消費税から、仕入れで支払った消費税額を控除して納付する多段階課税方式を採用しています(結果的に最終消費者が消費税を負担することになります)。
つまり、インボイス方式は、仕入れ側の課税事業者の仕入税額控除はインボイスに記載された消費税額が根拠となり、インボイスが無ければ仕入税額控除を行うことができないことを意味します。販売する課税事業者は、インボイスを仕入側に交付する義務を負います。仕入側の課税事業者はインボイスに基づかない金額で仕入税額控除を行うと、後日、税務調査があった場合にはこれが否認されることになります。なお、ここでインボイスとは、販売対象となった商製品ごとに付加価値税率(消費税率)と税額が明示された、納品書又は請求書をイメージすれば良いと考えられます。
インボイス方式が採用される理由
EUではインボイス方式が採用されていますが、その理由として次の3つが考えられます。
(1) 異なる税率ごとに税額が明示されているので、売り手にとっては正確な税額転嫁を実行できる。
(2) 同様の理由により、買い手にとっては正確な仕入税額控除の計算が可能となる。
(3) 免税事業者はインボイスを発行できないこととされており、免税事業者は付加価値税を請求できない。この結果、売上に係る消費税から仕入に係る消費税額を控除した金額が免税事業者に溜まる「益税」の発生が避けられる。
「請求書等保存方式」は、帳簿の保存に加え、取引の相手方(第三者)が発行した請求書等という客観的な証拠書類の保存を仕入税額控除の要件としているが、請求書等に適用税率・税額を記載することは義務付けられていない。
単一税率の下では、請求書等に税額が別記されていなくても仕入税額の計算に支障はないが、複数税率の場合、請求書等に適用税率・税額の記載を義務付けたもの(インボイス)がなければ適正な仕入税額の計算は困難になります。
「インボイス」とは、適用税率や税額など法定されている記載事項が記載された書類。欧州においては、免税事業者と区別するため、課税事業者に固有の番号を付与してその記載も義務付けているが、「インボイス」の様式まで特定されているものではありません。
下記に、日本の一般的な請求書とイギリスのインボイスを掲載しました。
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注)財務省HPより引用
2021年4月からは請求書に税額や税率を細かく記載する「適格請求書等保存方式」へ移行することになります。事業者には請求書の発行義務を課し、事業者や請求書の番号を記載することになり、虚偽の記載などの不正発行には罰則も設けられるそうです。おそらく日本において、事業者の登録番号は、特定個人情報番号(マイナンバー)を記載することになると思われます。この「適格請求書等保存方式」はEUのインボイスに近い方式になりますが、個別品目ではなく食糧品や雑貨などに大まかに記載できるそうです。最近の販売管理ソフトでは商品毎に税率を記載できるようになっていると思います。この「適格請求書等保存方式」の請求書では免税業者は発行できないことになるそうですので、免税業者から仕入れたものは仕入税額控除が受けられないことになるので、取引から排除される可能性があります。
改正後は食料品を取り扱う事業者は複数税率が取引に混在することになります。また、一般事業者でも食料品を購入した場合には軽減税率の取引が含まれますので、消費税の処理には注意が必要になりますから、請求書等は今まで以上に重要になると思われます。
海外では、標準税率が20%以上で食料品は半分以下の税率であることが多いので、今後日本も海外のようになるかもしれません。
今後、詳細な情報は分かり次第その対応方法をご紹介していきたいと思います。