代表社員税理士 福田重実
前号では、相続税対策としての贈与の活用について述べましたが今回は、財産の分割についてご紹介したいと思います。
財産の種類により簡単に分割できるものとそうでないものがあります。
現預金 :自由に分割可 通常口座毎に分割される場合が多い。
株式 :上場株は単位株で分割
非上場は1株単位で分割可 経営権の問題がありますので持株割合を考慮する必要があります。
投資信託 :通常一銘柄ごとに分割
生命保険金:生前に保険金受取人を指定し複数で分割可 (みなし相続財産となるため契約書に明記されているので、相続
時には分割しません)
車両 :単独名で名義変更
不動産 :土地及び建物
一筆毎に単独、共有分割可 ・・・将来売却や今後の相続を考慮すると単独で分割すべきだと思います。
負債 :借入金、未払金(カード未決済金)、税金の未払分、未払家賃、未払医療費これらも相続人が負担すべき負の
財産となり、相続人で分割して負担することになります。
相続時に財産の分割の基準として民法900条で定められている法定相続分があります。
法定相続分の基本的な考え方は、まず配偶者の取り分がありその残りを他の法定相続人で均等に分ける考え方です。具体的には以下の通りです。
@相続人が配偶者と非相続人の子供の場合
配偶者2分の1 子供2分の1(子供の人数で按分)
A相続人が配偶者と非相続人に父母の場合
配偶者3分の2 父母3分の1(父母で按分)
B相続人が配偶者と非相続人の兄弟姉妹の場合
配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1(兄弟姉妹で按分)
財産分割とは、相続が開始して相続放棄も限定承認をしないで3ヶ月が過ぎると、単純承認したことになり、非相続人が有していた一切の権利義務を相続人が相続分に応じて共同で相続することになります。この遺産の共有状態を解消して、個々の財産を各相続人に分配して取得させる手続きを遺産分割といいます。遺産分割の時期は相続開始後であればいつでも自由に分割することができますが、相続税の申告期限が非相続人の死亡から10ヶ月以内となっていますのでそれまでに分割される場合が多いです。
遺産分割は必ず上記の法定相続分でする必要はありませんので遺産分割の手続きについて説明します。
【遺産分割の手続】
遺言による分割
被相続人が遺言で分割の方法を定めているときは、その指定に従って分割します。また、遺言で分割の方法を第三者に委託することもできます。
協議による分割
遺言がない場合や、あっても相続分の指定のみをしている場合、あるいは、遺言から洩れている財産がある場合には、まず、共同相続人の間の協議できめます。相続人全員の合意があれば、必ずしも遺言による指定相続分や法定相続分に従う必要はありません。また、ある人の取得分をゼロとする分割協議も有効とされています。
調停・審判による分割
協議がまとまらないとき又は協議をすることができないときは、家庭裁判所に遺産分割を請求することができます。家庭裁判所への請求は調停、審判のいずれを申し立てても差し支えありませんが、通常はまず調停を申し立てることがほとんどです。調停が成立しない場合は当然に審判手続きに移行します。
【遺産分割の方法】
遺産分割協議書を作成すること。
@相続人を確定する。遺産分割協議は相続人全員の参加が大原則ですので相続人の一人でも欠いた分割協議は無効になります。相続人を確定させるために被相続人の出生から死亡までの戸籍、除籍、改製原戸籍などを取り寄せます。
A相続財産を確定する。
非相続人の遺産を確定させることです。例えば名義預金や名前を借りただけの不動産など
B遺産の評価をして財産目録を作成する。
遺産分割協議を行うにあたっては、あらかじめ被相続人が残した遺産のすべてを洗い出し、財産目録を作ります。こうすれば話合いもスムーズに進みます。 遺産分割の際の財産の評価は、分割の協議をする時点の時価(実勢価格)でするのが原則です。遺産の評価でとくに問題となるのは不動産です。とりわけ土地は路線価、固定資産評価額、公示価格、基準地価とかといわれるものがあり複雑です。もっとも、分割の対象になっている不動産をいくらに評価するかを、相続人の間で合意できればそれでもよいのです。相続の開始から現実に遺産分割するまでに相当な期間が経ち、その間に遺産の評価が大きく変動していることがありますが、現実に分割する時点で評価するものとされています。
C全員が分割内容に合意する。
遺産分割協議は共同相続人全員の合意が必要です。この場合、必ずしも共同相続人が一同に会して合意しなければならないものではありません。
D遺産分割協議書を作成する。
全員の合意により協議が成立したときは、それを証する「遺産分割協議書」を作成し、これに相続人全員が署名捺印します。この遺産分分割協議書は、不動産登記や預金の名義変更時に必要になります。
上記のように相続人間での合意が法定相続分とおりでなくてもその遺産分分割は有効になります。このように財産を分割するには財産の棚卸と合意が必要になるため被相続人の意思とはかけ離れたことになることもありますので、分割に意思を明確にするために遺言状の作成が重要になります。