今回は11月号に引き続き、当事務所の社員旅行の後編として、最終日に訪れた郡上八幡について紹介いたします。まずは、郡上八幡博覧館にて郡上八幡について学びました。
郡上八幡は、前日に訪れました白川郷と同様、重要伝統的建造物保存地区の選定を受けており、このように隣接する町や村がズラリと選定されている全国であまり例のない地域です。
長良川の上流に位置し、奥美濃の山々から流れ出た吉田川、小駄良川など三つの川が合流するところにあり、司馬遼太郎氏が「日本で最も美しい山城であり、隠国(こもりく)の城」と評された郡上八幡城がそびえ立ち、清らかな水が育んだ古い家並が広がる城下町です。
豊かな自然・水とともに生きてきた人々の生活の知恵が町中にあります。まず、御用用水という城下を碁盤の目の町割りにそって縦横に流れる清冽な水は、寛文年間(1660年頃)に城下町の整備をすすめた城主の遠藤常友が防火の目的のため4年の歳月をかけて築造したものです。家々が密集し、2度の大火に見舞われた郡上八幡は火事にはとても神経質でした。今でも家々の軒先には消化用バケツが下がっており、その伝統のなごりともいえるそうです。また、柳町用水は御用用水と平行して柳町を流れており、水利用の仕組みはいたって簡単で、各家々が持っている堰板をはめこんで水位を上げ、洗い物などをするというもので、家の前には水路があり、今も玄関先には堰板がありました。
そして、郡上八幡特有の水利用のシステムで水舟という湧水や山水を引き込んだ二槽または三槽からなる水槽があります。最初の水槽が飲用や食べ物を洗うのに使われ、次の水槽は汚れた食器などを洗浄し、そこで出たご飯つぶなどの食べ物の残りはそのまま下の池に流れて飼われている鯉や魚のエサとなり、水は自然に浄化されて川に流れこむしくみになっています。
川沿いの家々は、川にせり出すように建てられた3階建て・4階建てで、窓から釣竿を出せば魚釣りができるほどです。背後まで山が迫るという立地条件の土地が多いこの町の苦肉の家造りといえます。
郡上八幡の文化として、国重要無形民俗文化財に指定されている郡上おどりは、日本三大盆踊り・日本三大民謡の一つであり、400年にわたって城下町郡上八幡で歌い踊り続けられてきたもので、江戸時代に城主が士農工商の融和を図るために、藩内の村々で踊られていた盆踊りを城下に集め、「盆の4日間は身分の隔てなく無礼講で踊るがよい。」と奨励したため年ごとに盛んになったものです。そんな歴史背景から郡上おどりは誰もが…つまり観光客も地元の人もひとつ輪になって踊るという楽しさがあり、「見るおどり」ではなく「踊るおどり」といわれており、私たちも博覧館にて、手振りだけですが教えていただき、座ったまま曲に合わせて踊りました。曲は10種類で、誰もがすぐに参加できるようなシンプルで楽しい踊りでした。
毎年日程が決まっており、7月の第2土曜から9月の第1土曜日にかけて30夜以上にわたって踊られます。そのうちの8/13〜16は徹夜踊りと呼ばれ、空が白む頃まで踊り続けます。この徹夜踊りで、ひと晩じゅう踊っても耐えうる強さと“カランッ!コロンッ!”と蹴り鳴らされるかん高い音色が魅力的な踊り下駄は、踊りやすさと耐久性を追求した独自の製法で製造されています。通常の下駄との違いは、下駄の台から地面にかけて“歯”と呼ばれる部分の高さにあり5センチに設定され、歯の部分をあとから接着するのではなく、台とともに1枚のブロック板から削り出す製法をとっています。郡上踊りでは、下駄を豪快に蹴り鳴らすようにして踊るため、歯の部分を高くしておかないと、どんどん削れていってしまうのです。
また、郡上おどりに不可欠な浴衣と手ぬぐいに関連した伝統工芸として、430年の歴史をもつ郡上本染や郡上紬があります。郡上おどりで手ぬぐいは、半襟のように使用され、汗が浴衣を直接濡らすことを防ぐ、郡上人の知恵です。このような染の歴史を持つ郡上八幡はシルクスクリーン印刷発祥の地で、1950年頃に工業印刷機が開発されたことから、シルクスクリーンが世界中に広まったのだそうです。版の穴からインクを押し出して布などに柄や文字などを施しますが、水と空気以外はなんでも印刷できるとのことで、布ものの印刷の7〜8割がこの手法なのだそうです。私たちもこの機会に、シルクスクリーンを体験しました。布地の色から版のデザインや色…組み合わせに迷いながらも、楽しくオリジナル作品を作りました。
また、食品サンプルのパイオニア、岩崎瀧三氏が郡上八幡の出身であり、そのことがきっかけで今では郡上の重要な地場産業となり、食品サンプルの生産量日本一だそうで、町中の各工房では製作体験もできます。
昔ながらの町並みや伝統を大切にし、豊かな自然と水と共に生きる美しい郡上八幡の町・手ぬぐいや下駄の鼻緒など小物にカラフルで可愛いデザインを入れ、粋でおしゃれな郡上八幡の文化に触れ、「次は郡上おどりの日に訪れたい!」と思うような魅力的な町でした。皆さまも、機会があれば是非足を運んでみてはいかがでしょうか。