代表社員税理士 福田重実
先月号で述べました松下幸之助が説いた「素直な心」とは、単に従順である、従うという意味ではなりません。その素直な心の内容と効用の十か条について述べたいと思います。
〜素直な心の内容十か条〜
1.「私心にとらわれない。」
自分だけの利益や欲望にとらわれることのない心、私心にとらわれることのない心。私心が全くないという人はいない。私心は働くけれど、それらにとらわれることなく、他の人々にも十分配慮するとういうような姿。
2.「耳を傾ける」
誰に対しても何事に対しても、謙虚に耳を傾ける心。自分にも至らない点があり、それを改めなければならないから教えてもらおうとする心。そうした謙虚な態度からおのずと衆智が集まってくる。
3.「寛容」
寛容とは、広い心をもって、よく人を許し入れるということ。また人の過ちに対して、厳しくとがめだてしないということ。お互いが広い寛容のこころを持ち合うなら、共々に安らかに暮らしていくこともできやすくなる。
4.「実相が見える」
物事のありのままの姿、実相を見ることのできる心。無色透明のガラスをとおせば、物事がありのままに見えるように、素直な心になれば物事の本当の姿が見えるようになる。したがって実相に基づいた過ちのない判断ができる。
5.「道理を知る」
広い視野から物事を見、その道理を知ることのできる心。物事の一面だけを見るのではなく、背景なり全体の形を見抜いてその道理を知り、遠いおもんばかりをもって考えることのできる心。
6.「全てに学ぶ心」
すべてに対して学ぶ心に接し、そこから何かの教えを得ようとする謙虚さをもった心。何事も経験であり、勉強であるという心構えをもって人生をすごしていくならば、限りない進歩向上の姿が生まれてくるだろう。
7.「融通無碍」
物事に対して臨機応変、自由自在にとりむくことのできる心。どんな事態に遭遇しようと、驚き慌てることも、窮して行き詰まることもなく、正々堂々と対処し、そこによき成果を生み出してゆくことのできる心。
8.「平常心」
どのような状態にあっても、またどういう物事に対しても、常に平静に、冷静に対処してゆくことのできる心。とらわれのない、すっきりと落ち着いた心。心にとらわれがなくなれば、おのずと平常心、平成心を保つことができる。
9.「価値を知る」
良い物は良いと認識し、その価値を正しく認めることのできる心。価値のあるものがその価値を十分に発揮できてこそ、人も物もいっさいのものが生かされ、よりよき共同生活がもたらされる。
10.「広い愛の心」
人間が本来備えている広い愛の心、慈悲の心を十二分に発揮させる心。お互いが自分の利害や立場、考えや主張にとらわれて責めあい憎しみあうといった姿に陥ることなく、あたたかいこころをスムーズに表すことのできる心。
〜素直な心の効用十か条〜
1.「なすべきをなす」
打算や野心自己の利害を超越し、私心を離れてなすべきことを断固として行うことから、思わぬ良き道がひらけてくる。
2.「思い道りになる」
すべてに対して順応していくことができるから、なんでも自分の思い通りにすることができるようになる。
3.「こだわらない」
人から何を言われようと、何事が起ころうと、心にわだかまりやこだわりが残るということが少なくなる。
4.「日に新た」
現状にとらわれることなく、日に新たなものを生み出してゆくことができる。
5.「禍を転じて福となす」
危機に直面してもこれをチャンスとして受けとめ、禍を転じて福となすことができるようになる。
6.「つつしむ」
自分の立場をわきまえて、常につつしむという見識が生まれてくる。
7.「和やかな姿」
様々な物の見方、考え方があることが分かって、その良さを認め、取り入れることができる。
8.「正邪の区別」
互いに利害や感情にとらわれず、冷静に客観的に物事の正邪を判定することができる。
9.「適材適所の実現」
それぞれが自分の持ち味を十二分に発揮しうる適材適所の実現が進められる。
10.「病気が少なくなる」
物事の実相がわかるから、心を悩ませたり、いたずらに心配したり不安感に襲われることが少なくなる。
人が素直な心になれたら上記のような好ましい社会の姿が生まれてくると松下幸之助は言っています。「素直な心」でありたいものですね。