代表社員税理士 福田重実

 今回は、マイナンバーの実務対応について紹介します。

1.従業員からのマイナンバーの取得
 平成27年10月以降に個人にマイナンバーが通知られ、その提供を受ける最も多い場面は平成27年の年末調整時の「扶養控除等申告書」の取得時であると考えられます。当該申告書には従業員本人のマイナンバーと配偶者や扶養親族がいる場合には、それらの者のマイナンバーを記載してもらう必要があります。なお、扶養控除等申告書には、給与支払者すなわち事業主のマイナンバーも記載することになります。
 
マイナンバーの提供を受ける際は、その利用目的を、源泉徴収票の作成、健康保険、厚生年金保険届出事務等と利用目的を特定しなければなりません。
 なお扶養控除等申告書の提出がない場合は以前から年末調整の対象になりませんのでご注意ください。
 健康保険・厚生年金保険・雇用保険の各種届にも従業員のマイナンバーを記載することになります。

実際の場面では通知カードを持参してそれをコピーするのが大半のように思われます。この場合その保管について適切な安全管理措置を講ずる必要があります。

2.マイナンバー取得時の従業員の本人確認
 最も簡単な方法は従業員から個人番号通知カードの提示を受ける方法です。通常従業員を採用する時に住民票や運転免許証等で本人確認を行っていますので、身元確認書類の提示は省略できます。
 
『従業員の配偶者や扶養親族の本人確認』
 本人確認は「本人」からマイナンバーの提供を受けた場合に必要となります。従業員は扶養控除等申告書に従業員の配偶者や扶養親族のマイナンバーを記載することになりますが、扶養控除等申告書は従業員が会社に提出するものであることから、会社は配偶者や扶養親族の本人確認を行う必要はありません。この場合は従業員が個人番号関係事務実施者として、配偶者や扶養親族の本人確認を行うことになります。つまり従業員の責任で扶養家族のマイナンバーを会社に提示することになります。従業員が家族のマイナンバー通知カードの写を提出することも考えられますのでその取扱には注意する必要があります。

3.マイナンバーの保管と廃棄
 従業員のマイナンバーの保管は源泉徴収票や支払調書を作成する事務を行う上で一定期間の保管が義務付けられています。上記扶養控除等申告書は7年間の保存義務があります。したがって、原則として、保存期間が経過した扶養控除等申告書は速やかに廃棄する必要があります。

よって7年経過後は毎年書類の廃棄が必要になりますので、年度毎に書類を保存しておきましょう。

4.従業員の退職
 平成28年1月1日以降退職する従業員について当該者に係る退職金や給与を支払う場合は、マイナンバーを記載した調書を作成することになります。
従業員に退職金を支給する場合には、その支払いをするまでにその従業員からマイナンバーが記載された「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受ける必要があります。この申告書には支払者のマイナンバーも記載することになります。
 また、退職時までに支払った給与に係る源泉徴収票には、従業員のマイナンバーを記載し、それを本人に交付するとともに税務署や市町村に提出することになります。
 健康保険・厚生年金保険・雇用保険の被保険者資格喪失届出などの社会保険関係書類にも従業員のマイナンバーを記載することになります。

『従業員が退職した場合のマイナンバーの取扱』
従業員から提供を受けたマイナンバーについて、その従業員が退職した場合直ちに廃棄すれば良いというものではありません。扶養控除等申告書や退職所得の受給に関する申告書のように保存期間が法令上定められているものは、その期間が経過するまではマイナンバーと共に保管しなくてはなりません。したがって、退職した従業員のマイナンバーについては退職を契機に廃棄するのではなく、保存期限が定められている期間まで情報漏洩しないように適切に安全管理措置を講じる必要があります。
また、従業員が長期休職や退職した従業員を再雇用する場合のマイナンバーの保管についても上記退職者と同様法的保存期間は安全管理措置を講ずる必要があります。

5.個人の支払先からのマイナンバーの取得
 平成28年以降事業者が支払う一定の取引については支払調書の作成が義務付けられていますので、支払先からマイナンバーを取得する必要があります。
主なマイナンバーが記載される支払調書は以下のようなものです。

@報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書 
A不動産の使用料等の支払調書
B不動産等の譲受けの対価の支払調書  
C不動産等の売買または貸付けの斡旋手数料の支払調書
D配当金・剰余金の分配及び基金利息の支払調書
特に平成28年1月以降の会社の配当金については、株主からマイナンバーを取得する必要がありますので注意をしなくてはなりません。
マイナンバーの通知カードが送付されるまであと3ヶ月、とりあえず通知カードの受取と紛失しないように従業員には喚起する必要はあります。