平成27年から相続税が増税されます。最近相続税対策の相談が多くなっていますのでその対策としての贈与の活用についてご紹介します。
贈与とは、財産を無償で移転することをいいます。生きている内に贈与することを生前贈与といい、死亡により贈与することを死因贈与といいます。贈与は、「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思表示をし、相手方がこれを受諾することによって成立」します。(民法549条)ポイントは贈与者(あげる人)と受贈者(もらう人)の意思表示が大切です。例えば、贈与者が子供や孫名義で預金をしたとしても、子供や孫がその預金の通帳や印鑑の存在を知らないとすれば、単なる名義預金として贈与はなかったとされます。
生前贈与の活用
1 相続税負担の軽減
相続税が課税されることが予測される場合に、生前贈与をしていくことで相続財産を減らし、相続税負担を軽減できる可能性があります。
2 生前に財産の分割
生前に贈与者の意思により特定の人に財産を分割しますので、相続時に法定相続分により遺産分割するより事前に財産移転を明らかにできます。
3 相続人以外にも財産を移転できる。
孫や息子の嫁など、相続人にならない人に財産を移転することができます。
贈与税
贈与税の課税方法は「暦年課税」と「相続時精算課税」とがあります。
暦年課税
一人の人が1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額から基礎控除額の110万円を控除した額に対して贈与税が課税されます。つまり1年間に贈与された金額が110万円以下なら贈与税は課税されません。贈与税が課税される場合は、財産を贈与された人が、財産を贈与された年の翌年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告・納税をしなければなりません。
注意:子や配偶者などの「相続人」(相続等により財産を取得した者)への相続開始前3年以内の暦年課税による贈与財産は相続財産への加算(持ち戻し)の対象となります。
「相続人」にならない孫などへの贈与財産は持ち戻しの対象となりません。(孫が代襲相続人などの相続人となる場合は除きます。)
贈与税の計算:
(課税価格−110万円(基礎控除))×税率
相続時精算課税制度
贈与を受ける時、一定の要件を満たす場合にこの制度を選択することができます。
(適用対象者)
贈与者は60歳以上の親及び祖父母
受贈者は20歳以上の子(である推定相続人)及び孫
制度の適用は贈与者ごとに選択可能(年齢は贈与の年の1月1日時点で判定します。)
例えば、祖父からの贈与は相続時精算課税を適用し、父からの贈与は暦年課税を適用することができます。
(特別控除額)
選択した贈与者(祖父母・親等)ごとに2,500万円まで
(前年までに既に特別控除額を使用している場合には、その金額を差引いた金額)
(適用税率)
特別控除額超える部分に対して、一律20%
贈与時に課税された贈与税額は、相続時に算出された相続税から控除されます。
(留意点)
@「相続時精算課税制度」を利用して受けた贈与財産は、贈与時点の評価額で、相続発生時に相続財産に合算されて相続税が計算されます。
A贈与時にこの制度を選択した場合、以後、選択した贈与者(祖父母・親等)からの贈与は相続時まですべてこの制度が適用され「暦年課税」に戻ることはできません。
贈与における留意点
「贈与」の事実を明確にしておくことが大切です。
@贈与を受ける人が、贈与を受けたことを認識している。
A贈与契約書を作成する。契約書には、贈与する人・贈与を受ける人それぞれが署名捺印する。
B受贈者が未成年の場合は、法定代理人(通常は親権者)が署名捺印する。
C基礎控除を超える贈与を受けた場合、贈与税の申告をして、贈与の事実を証明する。
贈与を受けた者が贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告書を贈与を受けた者の所轄税務署に提出し、贈与税を納税する。
贈与税の申告書及び納付書は大切に保管しておく。
D贈与を受ける人は、自分名義の口座を開設している。
金銭の授受や保険料の支払い、贈与税の納付については自分名義の口座を利用する。
連年贈与の注意
毎年一定額を贈与することを連年贈与といいますが、注意しておかないと毎年の贈与ではなくその全額を1年の贈与として課税される場合があります。例えば、1、000万円の贈与契約がありそれを毎年100万円ずつ10年で分割してする場合など。 それを防止するために上記のように毎年贈与契約書を作成することが大切です。
贈与を上手く活用して相続税の増税に備え、更に財産の分割を円滑になるようにと思います。詳しいことは事務所又は担当者にご相談下さい。