代表社員 福田 重実

 10月1日から消費税が増税されます。今回の改正は、原則10%への増税です。今までの消費税増税は単一税率で、改正時に3%→5% 5%→8%へと一斉に変更になりましたが、今回は複数税率が適用されます。以前にも記載しましたが、改めて軽減税率についてご紹介します。

 軽減税率の対象品目 @酒類・外食を除く飲食料品 
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飲食料品の取扱い(販売)がない事業者の方についても、消費税の軽減税率制度実施後は「区分経理」が必要となります
 
 軽減税率制度は、全ての事業者の方に関係があります。飲食料品の取扱い(販売)がない事業者の方についても、仕入れや経費に軽減税率(8%)対象品目があれば、仕入れを税率ごとに区分する「区分経理」を行う必要があります。また、消費税の仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として「区分経理」をした帳簿の保存が必要となります。つまり、領収書等に軽減税率の対象品目である旨を記載しなければならないので、会計ソフトで処理する場合は、10%と8%を区分して処理する必要があります。TKCのFXシリーズはそれに完全対応していますのでご安心下さい。

実務上の経理処理の注意点
@価格表の改定
 商品やサービスの価格表を作成されている場合は、税込であれば2%分を改定する必要があります。また、売買契約書や賃貸契約書の契約金額には税抜価額で表示し、消費税別途表記するのが良いでしょう。飲食業の場合は、店内での飲食は10%ですが出前やテイクアウトは8%ですので、メニューを改定し、レジ又は請求書等で軽減税率の対象である旨、税率毎に合計したものを記載することになります。

A請求書発行の注意点
 10月1日からの売上に対して10%の消費税を課税になります。10月の請求書には9月末までの8%と10月1日以降の10%が混在します。システムで対応しているか確認し、手書きの場合は納品時を明記し税率を確認してください。請求書発行時には、再度確認してください。
また、請負契約等で2019年3月31日までに契約したものは、経過措置として8%の適用になりますので注意が必要です。特にシステムご利用の場合は、バックアップを必ず行い、万が一不都合が発生した場合に備えて下さい。

B値引き返品があった場合の注意点
 10月以降に返品値引きがあった場合、その値引きの対象となったものが、8%なのか10%なのかが問題になります。商品番号や納品書・請求書等から確認する必要があります。

Cクレジットカード使用によるポイント還元
 軽減税率以外にも「クレジットカード使用によるポイント還元」の施策があります。消費税引き上げに伴い、2019年1月〜2020年6月までの期間限定で実施が予定されています。消費者が商品購入の際に、クレジットカードで支払いをするとポイントが付与されます。還元率は、中小企業や個人経営の小売りや飲食・宿泊などは5%ポイント、コンビニや外食・ガソリンスタンドなどのフランチャイズチェーンは2%ポイントとなります。
 ポイント還元は、決済事業者(特定のクレジットカードや電子マネー・スマートフォン決済など事業協力者)が行うため、商品やサービスを販売している企業が何かしなければならないわけではありませんが、エンドユーザーとのトラブルを避けるためにも、接客をする従業員はポイント還元の仕組みについて十分認知しておくことが必要です。

D不動産賃貸収入に係る適用税率
 経過措置の適用のない不動産賃貸料に係る消費税率は、賃貸契約書に記載されている受領形態によります。例えば9月に10月分を受領する場合は10%になります。

E仕入業務
 商品が外注費等である場合は、10月分の請求書等は8%と10%の区分を確認して、会計処理をする必要があります。また、値引き返品を行った時はBと同様、その仕入を行った時の税率で処理をして下さい。

F経費の注意点
 ・賃借料はDと同様、前払かその月払いかを確認して税率の確認してください。
 ・リース取引の場合は、10月以降の引渡しは10%ですが、9月30日までの引渡しのリースは8%の取引となり
  10月以降も8%のリース取引が継続します。
 ・水道光熱費や電話料は、10月以降に支払いますので税率に注意して下さい。
 ・クレジットカードの決済は、1ヶ月以上前の取引を決済しますので、カード利用明細を確認し、利用時期により
  税率を確認してください。 
 ・飲料や会議等で使用する弁当等の食料品は軽減税率の対象商品ですので、領収書等で確認して処理する必要が
  あります。
10月以降でも9月までの購入による支払がありますので、税率確認が必要になります。

G消費税納税額
 10月決算法人及び個人事業者は、10月以降取引に係る消費税の納税額が増加しますので、納税資金に注意してください。8%から10%の増加は、納税額が25%増加することになります。