代表社員 福田 重実
昨年、ふるさと納税をされ特産品を取得された方も多いと思います。個人のふるさと納税は、ふるさと納税した金額から2千円控除した金額が住民税及び所得税から控除されるため実質2千円で特産品を手に入れることができる(所得により上限があります)ので沢山の方が特産品目当てに(?)ふるさと納税をされたと思います。
そして、平成28年には法人版ふるさと納税制度が創設されました。これは、企業に地方自治体への寄付を促し、企業から地方自治体に資金が移動し地方が活性化するという趣旨です。
法人税の通常の寄付金の場合
(1)原則
寄付金は法人の事業と関連のない支出であるため、法人税法上経費にならない、所謂、損金不算入と考えられています。しかし、公共性の高さや政策的意図により、一部例外があります。
(2)寄付金の4区分
@国又は地方公共団体に対する寄付金・・・全額法人税法上の損金(経費)になります。
A財務大臣が指定した寄付金(赤い羽根共同募金など)・・・全額法人税法上の損金(経費)になります。
B特定公益増進法人に対する寄付金(日本赤十字や認定NPOなど)・・・一部法人税法上の損金(経費)になります。
C上記以外の寄付金(神社や町内会への寄付)・・・一部法人税法上の損金(経費)になります。
法人版ふるさと納税
企業(青色申告法人)がふるさと納税を行った場合は「地方公共団体に対する寄付金」に該当するので、@に該当し、全額損金算入されます。現在の法人税等の実効税率が約30%なので、仮に100万円寄付をすると、約30万円の法人税等が減額されることになります。今回の改正では、新たに約30万円の税額控除を設け減税額を2倍の約60万円にしようとするものです。すなわち、法人は100万円の寄付で約60万円の税金が減税され実質約40万円の負担で済むことになります。
期間は、改正地域再生法施行日から平成32年3月31日までの寄付が対象になります。
注意点
(1)寄付先に注意
地方自治体が、地域再生法の地方創生のための地域再生計画を策定し、国の認定を受けた自治体に地方創生推進寄付活動事業に関連している寄付金に限定されます。つまり、東京都や豊田市など国から地方交付税を受けていない自治体は対象外となる可能性が高いので、予め確認を取る必要があります。また、本店所在地の自治体に対する寄付も対象外です。
(2)株主等の利害関係者の理解
企業が行う寄付は、本来の事業活動とは関係の無いため、株主等の利害関係者の理解を得る必要があります。寄付をすることは企業の利益をその分減少させることになり、配当・給与・賞与等に影響を及ぼすことになりますので、その寄付金に対する説明責任は企業にあります。
(3)企業活動とのバランスで検討する
法人税法上の寄付金は、企業本来の活動と関係の無い支出です。つまり支出に対する見返りがないのです。節税対策の一環で寄付したところで、売上に貢献することにはなりません。企業の財務内容から、設備投資・配当や従業員給与といった直接企業活動に投資したほうが、メリットがある場合もあります。
(4)特産品はもらえない
個人のように、寄付をすることによる特産品はもらえないそうです。
(5)赤字企業にはメリットがない
利益が出ており納税額が生じる企業には寄付金の約60%の節税効果がありますが赤字企業や法人税法上の繰越損失あり納税額が発生しない企業にはメリットはありません。
法人版ふるさと納税の効果
創設の効果として、「企業の創業地への貢献や地方創生のプロジェクトに取り組む地方への貢献を促進し、地方公共団体が自ら地方創生の取り組みを企業にアピールすることで、自治体間競争を促進する」などということが謳ってあります。
しかし、個人のふるさと納税とは異なり、自治体側に国から細かい要求がなされます。また、これまでの歴史上、企業から自治体への寄付は官民癒着を招きやすいといった土壌もあります。
企業として寄付をする場合は、慎重な検討が必要かもしれません。
ご検討の際は、詳しい計算方法を、担当者にお聞きください。