代表社員 福田重実

 最近、国会で配偶者控除の廃止が先送りされました。今回は、配偶者控除についてご紹介します。

 配偶者特別控除と配偶者控除の違いをご存知ですか?年末調整や確定申告ではその人の1年間の支払うべき税金を計算し直す作業をします。税金を計算する際に、支払う税金を減らすことができる「控除」の一つが「配偶者特別控除」と「配偶者控除」になります。
配偶者特別控除と配偶者控除は、名前が似ていますが、適用される方や控除できる金額など全く違う控除制度となっています。また、配偶者特別控除と配偶者控除は、同時に適用することができません。

1.配偶者控除
 配偶者控除は適用されると38万円の控除を受けることができます。配偶者控除を適用するためには4つの要件を満たす必要があります。
 要件@民法の規定による夫婦。
 要件A生計を一にしている。
 要件B年間の合計所得金額
 要件C事業専従者の給与がない。

2.配偶者特別控除
 給与収入が103万円を超えてしまうと配偶者控除の適用対象外となってしまいますが、上記の要件に加え、B年間の合計所得金額の要件が下記の要件を満たしていれば、配偶者特別控除が適用されます。

追加要件(1)
控除を受ける人というのは、納税者のことを指します。つまりこの追加要件では、例えば納税者が夫の場合、夫の合計所得金額が1千万円以下でなくてはいけないということです。

追加要件(2)
アルバイトやパートなどの給与所得が65万円を差し引いた後の金額が38万円を超えて76万円未満の方を対象としています。つまり、1年間の給与収入が103万を超えて141万円未満が条件となります。

配偶者特別控除で控除される金額(所得税)
 配偶者控除は1年間の給与収入が103万円以内なら金額に限らず控除額は一律で38万円ですが、それに対し配偶者特別控除では、収入に応じて控除額が段階的に変化していきます。配偶者控除の適用を考える場合は103万円ギリギリに収入を調整した方がお得と言えますが、配偶者特別控除では金額によって控除額が変わるので注意が必要です。以下は、収入と控除額の一覧です。

・103万円超〜105万円未満:38万
・105万円以上〜110万円未満:36万
・110万円以上〜115万円未満:31万
・115万円以上〜120万円未満:26万
・120万円以上〜125万円未満:21万
・125万円以上〜130万円未満:16万
・130万円以上〜135万円未満:11万
・135万円以上〜140万円未満:6万
・140万円以上〜141万円未満:3万

配偶者特別控除で控除される金額(住民税)
 配偶者特別控除では、住民税の控除額も所得税と同様に収入に応じて変化します。また、控除額を決定する基準となる収入額は前年の金額となるので注意が必要です。例えば、前年に仕事を辞めて、次の年に働いていなくても、前年分の収入で住民税は計算されます。失業中であっても納税通知書は郵送されてきます。

・103万円超〜110万円未満:33万円
・110万円以上〜115万円未満:31万円
・115万円以上〜120万円未満:26万円
・120万円以上〜125万円未満:21万円
・125万円以上〜130万円未満:16万円
・130万円以上〜135万円未満:11万円
・135万円以上〜140万円未満:6万円
・140万円以上〜141万円未満:3万円
・141万円以上:0円

配偶者特別控除が廃止される理由
 配偶者控除と配偶者特別控除は廃止が検討されていますが決定されると税控除がなくなる分、専業主婦やパート勤務をされている家庭は税金の負担が以前よりも大きくなるかもしれません。配偶者控除と配偶者特別控除の廃止の背景には、2つの指摘があります。1つは二重控除について、もう1つは収入額の調整についてです。

 まず、現在の税控除の考え方だと、夫の収入とその扶養となる妻の収入は別々に考えられています。収入額によっては夫が基礎控除と配偶者控除を受けつつ、妻も基礎控除を受けることとなり、二重に控除を受けることになります。それは不公平なのではないかと指摘する意見がありました。そして、パート勤めなどをして家計を支える妻が、税金のかからない上限を意識して意図的に収入を減らしているという部分に注目をしています。もし、その制度自体をなくしてしまえば、上限を気にすることなくもっと働けるようになる女性の社会進出を狙った考え方です。

 配偶者控除等の廃止が決定されてから慌てないように、今のうちからどんな変化が起こるのかをしっかり理解しておきましょう。